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からくり人形師、熱弁をふるう

2008.09.14

 前回に続き、二期倶楽部で行われた「山のシューレ」の話題。

 3日間の開催期間中、最も面白かったのは、3日目の夜に行われた能楽師・安田登とチェンバロ奏者・平かおりの即興による共演。安田氏が夏目漱石の「夢十夜」を朗読し、それに合わせて平氏が即興で雅な伴奏をつける。安田氏の声は朗々と響き渡り、まるで時空をこえて漱石が現代に甦ったかのよう。くわえて、ときどき床を蹴る時の気迫のこもった足音。空気を切り裂くようなド迫力であった。

 能楽師の朗読とチェンバロの組み合わせなんて、考えたこともなかった。一流同志は、簡単にコラボレーションができてしまうのだろう。

 2日目の夜に行われた原壮介のギターも良かった。年輪が醸し出す独特のオーラが会場に満ちあふれ、やんやの喝采に包まれた。

 そして、もうひとつは、以前『fooga』の特集でも紹介したからくり人形師・半屋弘蔵のからくり人形実演。江戸時代に考案されたからくり人形を現代に甦らせた半屋氏は、とにかく口上も抜群。口から先に生まれてきたのだろう、放っておくと何時間でも喋り続けていそうな気配。大人も子どももその精緻な世界に引き寄せられてしまった。

 現在、からくり人形師と呼ばれる人は国内に4人しかいないというが、ニッポンの製造業の原点とも言えるからくり人形がきちんと未来に引き継がれなければならないと強く思った。

 ところで、一度途絶えたからくり人形が、なぜ復元できたかと言えば、設計図が描かれた書物が残っていたこと。その書物がなければ、日本の製造業は100年くらい遅れていただろうと言われるが、それもけっしてオーバーではないと思う。書物というものは、それほどに価値のあるものなのだ。

 半屋氏から、来年あたり、師匠の生き様やからくり人形の魅力、そして貴重な図面を1冊の本にしたい、その時は高久さんに書いてほしいという話があった。ほんとうにそんな本を作ることができたらいいなと思う。もしかしたら、日本の貴重な遺産になるかもしれない。

(080914 第66回 写真は唾を飛ばしながら熱弁をふるう半屋弘蔵 )

 

 

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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