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若葉の匂いと俯く人びと

2015.05.05

御苑で読書 昔から、世の中が連休のときに外出することはない。どこへ行っても人ごみだし、渋滞にも巻き込まれる。料金も高い。

 それに世間が連休だからといって、休みという感覚はない。いつも生活のペースは変わらない。
 つくづく御苑のヘビーユーザーだと思う。朝のランニングに加え、天気のいいときは雪駄をつっかけ、歩いて行ってベンチに座り、本を読んだり音楽を聴いたりする。新宿三丁目方面へ出かけるときは、御苑を横切っていく。
 この季節は、一年のうち、ベストだと思う。風にのってやってくる若葉の匂いを嗅いではうっとりし、鮮やかな緑を目にしては心身が浄化されるのを感じる。鳥の鳴き声、人のはしゃぐ声など、命の膨らみに溢れている。
 読書や音楽に飽くと、人間観察をする。ベンチに座って見ているだけで、自然や人間の営みが万華鏡のように映し出されるのだ。
 しかし、「?」というシーンにも出くわす。例えば、カップルで歩いているのに、二人とも俯いている。スマホに見入っているのだ。せっかく御苑に来ているのに、周りの光景もパートナーの姿も目に入らない。背中を丸め、片手に持ったスマホを見続ける。いったい、主人公はどっちなんだと思うが、もちろん、声に出して言うことはしない。
 電車の中でも大半がスマホに見入っているが、そんなにおもしろいことがあるのだろうかと思う。ま、これは趣味の違いだから、他人がとやかく言うことではない。しかし、駅の雑踏をスマホ見ながら歩くのだけはやめてほしい。ぶつかりたくないのならよけてくれとばかりの、傲慢な態度である。
 SNSが定着して、一見便利になったようにも思えるが、ほんとうにそうなのだろうか。大事なことを失ってはいないか。例えば、フェイスブックで、誕生日のお祝いに花の写真を送りつけているのを見るにつけ、「いよいよ日本人もこんな体たらくになってしまったか」と嘆息をつく。そんな薄っぺらなことをして、ほんとうに満足なのだろうか。送る方も送られる方も。花の画像を送ってもらったことがないのでわからないが、私なら「いいかげんにしてくれ!」と思うだろう。「いや、相手のイメージに合う花の写真を送ることは、それなりにいいと思う」と言うかもしれないが、こうなると趣味の違いというより人生観の違いといっていい。
 その昔、立花大亀老師が茶会で松下幸之助を叱りつけた。
「松下君のおかげで世の中便利になったが、人の心はどうした?」と。
 その叱責がやがて松下政経塾を生むことになったというのは有名な話。
 いま、政界や経済界の重鎮を叱りつける大物はいるのだろうか。どうも見当たらないような気がする。まして、市井の人々を叱りつける人はいないだろう。
(150505 第555回)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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