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ココロバエ
美し人

巡り巡って……

2015.04.29

新CPサイン 少し前の小欄に、25年以上使ってきた社屋を売却し、事務所を移転すると書いた。明日(4月30日)には引っ越し作業がほぼ完了する。移転先は、宇都宮の私の自宅である。週に一回くらい、出社する際に使っていた程度で、もったいないと思っていた。

 もともと一般の住宅のイメージとはほど遠く、リビングをかなり広めに作っておいたことが功を奏した。机4つなど、さまざまなモノを運び入れてもじゅうぶんのスペースがある。2階には在庫書籍も多数収納した。
 その自宅、私がつけた名前は「上弦の家」。屋根の形が半月の形だからだ。
 竣工したのは21年半前。構想はその1年半前に始まった。
 自分たち家族の(と言っても、当時は妻と二人)ライフスタイルを徹底的に分析し、どういうコンセプトの住まいにするべきか、 どういう間取りがいいかなどをまとめあげた。並行して、建築家選びをした。
 当時、世田谷区の桜上水に事務所を構えていたピトリ・ピコリの下島恒雄氏にデザインを依頼した。下島氏がアズビー・ブラウンというイギリス人の建築家と『プレジデント』で対談していた記事を読み、そのイタリア人みたいな楽しそうな人にお願いしようと思ったのだ。
 仕上がったデザイン画をもとに、地元の建築家に実施図面を起こしてもらい、それをもとに施工会社を相見積もりで決めた。内装のデザイン・施工は除き、それは別の会社に依頼した。かなり手間のかかる作り方をしたのだが、仕上がった後、いくつかの建築雑誌に紹介された。
新事務所室内 建築が始まる直前、妻のお腹に命が宿った。偶然なのだが、出産予定日と家の竣工日がほぼ重なった。
 予定日の少し前、妻の膨らんだお腹に向かって言った。「少し前に出てきてくれないかな。引っ越しの作業と重なるんだ」。事実、出産予定日と引っ越しの日が見事に重なっていた。
 私の声を聞いたのかどうかわからないが、子供は2日前にこの世に出てきてくれた。そんなわけで、「上弦の家」と娘の誕生はほぼ同じなのである。
 以来21年強、この住まいを舞台に楽しい日々の連続だったような気がする。
 その時の娘は、いま、就活にいそしんでいる。時間はたっぷりと過ぎたのである。
 そして、ここを舞台に、コンパス・ポイントとジャパニストの新たな歴史が始まる。生々流転といおうか、物事は巡るのである。
(150429 第554回 写真上は玄関のサイン。以前は高久家のシンボルマークがあった。写真下は事務所となるリビングの一部)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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