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ココロバエ
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バカ者の底力

2013.03.18

 

坂本龍馬記念館 人間はほんとうに面白い。そう思わずにはいられない。

 先月末、高知へ飛んだ。〝橋本龍馬〟こと橋本邦健氏に取材するためである。

 世の中を変えるのは、常識にとらわれない〝バカ者〟だと言われるが、橋本さんも常識にとらわれない〝大バカ者〟。今までの武勇伝、そして現在行っていることを聞けば聞くほど、そのバカ者ぶりが際立つ。

 思わず、「橋本さんは正真正銘のバカ者ですね」と笑ってしまった。もちろん、最大級の賛辞なので、気分を害しているはずはないと思うのだが……。

 43歳のとき、東京から郷里の高知に戻り、寂れた姿に愕然とする。

 「かつて幕末を動かした薩長土の一角であった土佐藩なのに、今の高知はなんたるザマか。第二、第三の龍馬がこの地から出でなければ高知の未来はない」という動機で龍馬を顕彰する記念館建設を思い立ち、そのために10億円の寄付を集める活動を始める。願いが成就するまで髪の毛を切らないと宣言し、以後、龍馬ばりの袴姿に刀という出で立ちで過ごすことになる。6年半伸ばし続けた髪の毛は、1メートル近くにもなったというのだからオモシロイを通り越して、スゴイ。

 東京都が尖閣諸島を購入すると宣言した際、全国から多くの寄付金が集まったが、そのときでさえ総額は14億円強である。経済的に疲弊していた高知県で、しかも若者ばかりが集まって10億円集めるとのろしをあげた様子は、客観的にはかなり無謀であったはずだ。

 案の定、橋本さんはさまざまな壁にぶつかる。その都度、乗り越えるが、もはやこれまでかという状況に陥り、何度も死を決意する。

 しかし、死ぬ勇気がない。やがて、「龍馬」に助けられ、プロジェクトは満願成就する……というエピソードだが、全国広しといえど、一人の民間人に煽られる形で地域の若者たちが寄付を10億円集めて、立派な建物をつくってから県に寄贈するなど、他に事例がないだろう。

 その他にも、橋本さんは国土交通省と交渉し、「高知龍馬空港」という、国内唯一の人名を冠した空港を実現させたり、NHKの『龍馬伝』放映決定への長い交渉、そして「自忘他理」という龍馬の精神を全国、及び海外に広めるため、各地に龍馬会をつくり(国内156、海外7)、72歳の今でも現役バリバリの活動を続けている。

 詳細は『Japanist』第17号に詳しいが、その気になれば何だってできるということを身をもって証明してくれた。

 しばしば、最近はバカ者が少なくなったと言われる。たしかに幕末〜明治に比べればそうだろう。しかし、現代にもその系譜を継ぐ者はいるのだ。

 取材は龍馬記念館で午後1時から始まり、夕方から酒場に場所をチェンジし、終わったのは閉店時間の午後11時だった(笑)。

 (130318 第409回 写真は、坂本龍馬記念館)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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