多樂スパイス
HOME > Chinoma > ブログ【多樂スパイス】 > いろいろな人がいて、この社会

いろいろな人がいて、この社会

2013.01.29

ノートルダム大聖堂 今回施行される公務員の退職金減額条例にともない、施行前に辞めると退職金が手元に多く残るということから、「駆け込み退職」する教員がたくさんいるらしい。「らしい」と書いたのは、実際にそういう人に会ったことがないので、あくまでも「風聞によると」という意味を込めて……。

 この制度を考えた人は、今年退職する教員たちに「踏み絵」を踏ませたかったのだろうかと邪推したくなるくらい、傍目にはオモシロイ人間模様が繰り広げられている。

 つまり、どういうことかというと、「教師としての仕事に誇りや責任感をもっている教員は、全体のどれくらいいるのかなあ」ということを調べてみたかったのではないかと。そして、はからずも今回の「事件」でおおざっぱな状況がわかった。

 埼玉県では、2月1日の施行前に辞めると、手元に70万円程度多く残るというが、実際に辞める人が約110人に対し、辞めない人は1000人以上いるという。辞める人の中には担任を受け持つ人もいるという。

 また、駆け込み退職は教員だけではなく、愛知・兵庫両県では約230人の警察官が施行前に退職するという。

 それにしても、たった70万円ぽっちで自分のそれまでの人生を「意味のなかったこと」にする愚挙をどう理解すればいいのだろう。教育委員会や教員の仲間たちには、駆け込み退職する人たちを弁護する人もいたが、「恥の上塗り」というものだ。責任を放棄された子どもたちは、今後、何を信じて生きていけばいいのか。「大人というものは信用ならない」と反面教師にするかもしれないので、あながち無意味とばかりも言えないが……。

 ところで、私が言いたかったことは、そういうことではない。

 辞める人の10倍もの人が、有利な条件を選ばずに職務をまっとうするという事実を見るべきだということ。その人たちは、駆け込み退職する人よりもわずかに退職金が減るが、それ以上の誇りを胸に抱いてこれからの人生を歩むことができる。そのちがいは、大きいはずだ。

 と同時に、日本の社会がまだまだ健全だということがわかった。おそらく中国なら、比率は真逆になっていることだろう。

 これから国も地方も財源が不足するのは必至。今後、同じような「踏み絵」を突きつけられるケースが多々あると思う。そのとき、自分はどういう行動をとるか、今から考えておくのも無駄なことではないはずだ。

 

 ところで、なんでこのテーマにノートルダム大聖堂なの? と思う方もいるだろう。

 以前、ノートルダム大聖堂に行ったとき、「まさにこれが人間模様だ」と思ったことを思い出したからだ。

 宗教心の象徴である大聖堂の前の広場に集まるのは、有象無象の人間たち。信仰心厚い人(人を疑うことを知らない人でもある)が大勢訪れることがわかっているので、その「カモ」を狙って、腹黒い連中が集まってくる。広場には、一見して清らかな心の持ち主、一見して隙あらば金をくすねてやろうというイチモツを腹に秘めた人たちなど、いろいろな人がごった返すことになる。

 「いろいろな人がいて、この社会」。

 なるほど、今回の「駆け込み退職」もそう考えれば、大いに納得できる。

 要は、自分はどちら側に入るのかということ。そのためにも、自分の信念を明らかにしておく必要はある。

 (130129 第398回 写真は、パリのノートルダム大聖堂)

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

多樂塾

SPONSORED LINK

ココロバエ

Topics

記事一覧へ
Recommend Contents
このページのトップへ