電池切れになる前に
昨年の暮れからある書籍の執筆・編集にかかりきりになり、それこそ正月も土日もないありさまだ。もともとカレンダーの休日には興味も関心もない人間だが、「まだまだ気力・体力ともにあるじゃないか」と調子に乗っていたら、いきなり電池切れを起こした。急にエネルギーがショートし、空っぽ状態になってしまったのだ。まったく動く気がしない。「これは風邪をひく!」と咄嗟に判断し、黒糖生姜を熱湯で飲み、1枚余分に着てベッドにもぐり、体を温めた。それでなんとか20%ほどはチャージできたのだが、いまだ本調子ではない。
若い頃、アマチュアのロードレース大会に何度か出場し、途中で電池切れになったことがある。そのときはバナナでエネルギーをチャージし、なんとかゴールまでたどり着いたが、スポーツと日常生活はそもそも異なる。今回の出来事はこれからの戒めにしなければと思った。じゃないと必ず重篤な病気を引き起こす、と。
もうひとつ理由として考えられるのは、電池切れを起こす直前、気が抜けたからかもしれない。昨年、娘が小娘を産み、初節句が大阪であった。お食い初めは欠席したため、今回は絶対に出席すると決めていたのだ。さらに、せっかく関西へ行くのだからと、その前に大津に宿をとり、琵琶湖を周遊した。琵琶湖の周辺、いわゆる湖西・湖北・湖東はいずれも歴史的スポットが充実していて、風景も絶妙。いま、最もお気に入りの場所である。
はじめ、湖西線に乗ってのんびり湖の景色を眺めながらマキノ駅で降り、近くの湖畔でボーーーーーーッとした。静寂に包まれ、聞こえてくるのはかすかなちゃぷちゃぷという波の音と水鳥の鳴き声だけ。翌日はレンタカーを駆って湖東三山を巡った。湖東三山とは西明寺・金剛輪寺・百済寺を指すが、いずれも歴史遺産がギュー詰めで風光明媚。国宝・重文がひしめきあっている。
そんなこんなが複合的に積み重なり、電池切れと相成ったのだろう。
書籍のゴールは見えてきた。もう人踏ん張りだ。
(260304 第1308回)
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