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紺碧の将

伝わるメッセージとは

2026.02.17

 先日、α世代(2010〜24年頃に生まれた、Z世代の次の世代)の特徴をまとめた記事を読んで愕然とした。「作り込んだ広告は信用しない」というものがあったのだ。その代わり、手作りの情報に親しみを感じると。広告制作をなりわいにしている弊社にとって、深く考えざるを得ないことである。

 とはいえ、共感している自分もいる。前回は政治の言葉が空疎だと書いたが、企業(特に大企業)の広告もきわめて空疎だ。社会に貢献するとか地球環境にいいなどときれいごとばかりだが、そんなふうに思っていないのは明らか。事実、そういう会社ほど裏で悪事を働いて、露見すると記者会見で原稿を棒読みし、みっともない姿をさらしている。そもそもその会社の社長になったのは厳しい出世競争を勝ち抜いた人が大半で、そんなきれいごとだけで勝ち抜けるほど甘い世界ではないだろう。もちろん、広告をつくっているのは広告代理店だろうが……。

 近年、私は〝きれいごとだけのメッセージ〟をつくることに甚だ抵抗を感じている。依頼主の〝いいところ〟を抽出し、表現するのは当然として、あまりに実態とかけ離れたものはつくりたくない。

 そんなふうに思っているところに、ある日、一枚の折込チラシが目についた。ガリ版刷りの粗末なチラシだが、手書きのメッセージに惹かれた。

 「スローリーディング宣言」というタイトルがある。本文の一部を紹介しよう。

 ――(書店には)話題の本がたくさんありすぎるので、目次と広告だけ見て読んだことにする。(略)すこしでも速く多く読むために、速読法を身につける人もある。

 だが、ちょっと待ってほしい。

 何世代も読み継がれた本は、最近出版された本よりも価値がないのだろうか。

 時間に吟味された古い本を読む方が、評価の定まらない新しい本を自分で吟味するより有意義ではないだろうか。

 素早く読み終えることは、一冊の本を時間をかけて読むことよりいいのだろうか。ゆっくり時間をかけて味わうのでなければ、取りこぼしてしまう事柄があるのではないだろうか。(略)十代で読んだ本を、子や孫を持ってから読み返せば、変化していく自分を発見できるかもしれない。(略)新刊を紹介するプロでないなら、みんなが読む本は他の人に任せて、自分しか読んでいない本を持つ方がいいのではないだろうか。

 世代を超えて読み継がれてきた古典を読むこと。声に出すようにして、ゆっくり読むこと。同じ本を何度も読み返すこと。自分だけの愛読書を持つこと。

 こういう読書を〈ゆっくり読書=スローリーディング〉と名付けてみたい。(以下、略)

 

 心を動かされた私はすぐさま吉祥寺の「よみた屋」という古書店へ足を運び、さんざん吟味した結果、『芭蕉の謎と蕪村の不思議』(中名生正昭)という本を買った。そして古書店の魅力を再発見し、後日、神保町を渉猟した。

 そのとき買った何冊かの本のなかに、写真のようなものがあった。

 芝木好子の『隅田川暮色』の化粧箱入り本である。文庫本は持っていて、本のコラムでも紹介していたが、化粧箱入は本の持つ波動、存在感がまったく違う。

 表紙を開いてビックリ! 「謹呈 北杜夫様 芝木好子」とあるではないか。もちろん、北杜夫本人が古書店に売ったとは思えない。ま、顛末はなんとなくわかる。こんな一幕も古書店ならでは。

(260217 第1307回)

 

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https://www.compass-point.jp/book/konpeki.html

 

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