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稼げないニッポン

2025.10.26

 衝撃的なニュースがあった。

 国際通貨基金(IMF)が発表した世界経済の見通しによれば、日本のGDP(名目国内総生産)が来年(2026年)、インドに抜かれて世界5位となり、30年にはイギリスにも抜かれて6位に下がる見込みという。長年、世界2位を維持していた日本だが、中国とドイツに抜かれ、今後も復調の兆しは見えない。

 GDPとは、国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計を表す。ざっといえば、1000円の商品がひとつ売れたとして、その原価が500円であれば、残りの500円が付加価値としてGDPに換算される。

 中国やインドに抜かれるのは仕方がない。人口がべらぼうに多いのだから。問題は、人口8300万人のドイツ、6900万人のイギリスの後塵を拝すということ。つまり、日本人の一人当たりの〝稼ぐ力〟はGDP以上に低い。事実、24年の「世界の一人当たりGDP」を見ると日本は36位。G7では最下位、韓国や台湾、スロベニアよりも下位に位置する。

 この数字が意味するところはなにか?

 ひとことでいえば、国民一人ひとりの「稼ぐ力」が下がっているということ。しばしば日本の衰退原因として、少子高齢化、それに伴う労働人口の減少と経済の停滞、技術革新の遅れ、国内消費の伸び悩み、国際競争力の低下などが挙げられるが、私は「成熟社会病」が遠因にあると思っている。働けるのに働かない、あるいは少ししか働かないということは、裏を返せば、それでも食べていける国であるということ。働かなければ食べていけない状況であれば、働かざるをえない。国民の多くが働けば税収も消費も増え、経済は活性化する。経済が活性化すれば、社会全体も活性化する。自明の理である。

 高市新総理が「ワークバランスを捨てて、働いて働いて働いて働いてまいる」、議員たちにも「馬車馬のように働いてもらう」と語ったが、言いえて妙である。日本は、この機にそうならないと遠からず貧しい国に転落する。ベタな言い方だが、日本が復活するには、いかにハングリー精神を取り戻すかにかかっていると思う。

 しかし、日本が自発的にそうなるのはかなり難しいとみる。そうなるためにはもっと貧しくなる必要がある。日本人は、せっぱつまらないと本気を出さない民族だからだ。言い方を変えれば、窮地に追い込まれれば底力を発揮する。歴史を概観すれば、そういう民族性が見えてくる。

 今後、カギを握るのは女性と高齢者だろう。もっと働いて収入を得、税金も払う。可処分所得が増えれば消費も増える。外に出て刺激を受ければ本人も気力と活力が出る。安倍さんの時代、「一億総活躍社会」を目指すとしたが、今こそそれを目指すべきではないか。

(251026 第1294回)

 

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