人工の空気
風邪などめったにひかない人間だったが、ここ数年、年に2〜3度もひくようになった。年齢とともに免疫力が落ちているということもあろうが、第一の理由は人工の空気、いわゆるクーラーであることは明白。夏のはじめ、クーラーを使い始めると風邪をひく。
『Japanist』で故・真弓定夫医師に取材したとき、真弓医師はこう語っていた。
「食べ物の添加物も危険ですが、もっと危険なのは人工の空気です」
特に冷やしすぎたエアコンの空気による害を真剣に訴えていた。
一般的に人工の空気が体に悪いとは思われていないが、あれによって体温調節の機能が衰えているのは事実。これだけ暑いのだからエアコンなしで夏を過ごすのは危険だが、冷やし過ぎも危険と心得たい。私はこれだけ熱中症が増加しているのは、自分で体温調整する機能が低下していることと無関係ではないと思っている。なにごとも、目先の何かを得れば何かを失う。
真弓医師も、「これだけ暑いのだからクーラーを使うなとは言わないが、外気との温度差を5度くらいに抑えるべきだ」とおっしゃっていた。しかし外が38度、室内が23度などというケースはたくさんある。特に電車、デパート、飲食店、美術館……、私にとってキンキンに冷えた場所は〝コワいところ〟で、ジャケットとストールなしではいられない。
ところで、今回の風邪、熱が上がり始めたところで熱を出し切ろうと思い、重ね着をして首にタオルを巻き、少し多めに水を飲んで汗をかいた。すぐ38.6度まで上がり、その日はそのあたりで一進一退。しかし一晩寝ると翌朝はスッキリ感があり、夕方には平熱に戻った。むしろ、デトックスをした爽快感さえある。
世の中の健康の常識は「クーラーで部屋を冷やせ」「熱があったら冷やせ」だが、私は「室内はせいぜい28〜29度くらいに保ち、風邪をひいたら熱を出し切れ。解熱剤などもってのほか」。さて、どっちが正しいのだろう?
(250629 第1277回)
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