体力の衰えを実感した登山
あるとき、娘と「これまでに見た風景でいちばんよかったものは」という会話を交わした。う〜む、としばし考え、導いた結論は涸沢カールだった。登山をしている人ならお馴染みの場所である。そこでふと、また行ってみたいと思った。本来であれば涸沢は目的地ではなく、周囲の3000メートル級の山々を登る拠点に過ぎないが、今回はそこを目的地とした。だがしかし、思いがけず体力の衰えを痛感することとなった。大正池から涸沢までコースタイム7時間のところ、30分も余計にかかってしまったのだ。
言い訳をすれば、いくつか思いつく。朝から冷たい雨に見舞われた。雨具を着ての登山は初めてである。足場は悪く、標高が上がるにつれ気温が下がり、体力を奪われた。土砂崩れの影響で河童橋から明神まで迂回路を歩いた。とはいえ、それらを考慮しても、以前では考えられなかったことである。
前回、涸沢へ行ったのは、奥穂高岳に登ったときで、9年前のこと。そのときと比べ、明らかに老いている。生活のリズムと食事に気を使い、毎朝1時間のトレーニングを続けてこうなのだから、なにもしなかったらどんなことになっているのだろう。
下りはさらにひどかった。靴のサイズが合わないため、一歩ごとにつま先が痛みを発した。同じコースを歩くのに、なんと8時間以上も要してしまった。
ただ、難儀なことの多かった登山ではあったが、朝、日が昇るときのダイナミックな自然の変化には目を瞠った。刻一刻と雲は色を変えながら空を流れていく。まさしく地球は生きている! と感じる一幕であった。
今思えば、雨中、長時間歩いたことは貴重な体験だった。次回、雨に見舞われたときの対応ができる。
涸沢ヒュッテ到着後の様子
ほんとうはこういう眺望を望んでいたのだが……(↓)
翌朝、刻一刻と色を変える空
自然が映し出すダイナミックな映像に見入る宿泊者たち
下る途中、屏風ノ頭あたり
(240923 第1239回)
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