哀れ、マングース
人間の傍若無人ぶりを見るにつけ、ときどき人間であることが恥ずかしくなる。
環境省は9月3日、奄美大島のマングースが根絶したと宣言した。
もともとマングースはこの地には生息していなかったが、猛毒をもつハブ対策として1979年、約30匹が持ち込まれた。その後、マングースの数は増え続けたが、肝心のハブ対策は進まなかった。なぜならマングースは日中活動し、ハブは夜行性なので空振りになってしまったのである。
なんというお粗末さであろう。そんなこともわらかずに島外から外来種を持ち込んだとは! あげく、マングースとハブが対決するというショーでひと儲けしようという人まで現れた。
マングースは人間の思惑に反してハブを捕食せず、国の天然記念物であるアマミノクロウサギなどを捕食した。もちろん、マングースに罪はない。生きるために食べなければいけないのだから。
国はマングースの根絶を目指し、捕獲に乗り出した。これまでに捕獲されたマングースは3万2000匹を超えるという。捕獲とはいうが、もちろん殺すだけである。
いったい、生き物の命をなんだと思っているのだろう。人間の浅慮で勝手に見知らぬ島に持ち込まれ、子孫をことごとく抹殺されたマングースが人間の言葉を話すことができたなら、なんと言うだろう。
同じ理由でマングースが持ち込まれた沖縄では、マングースはヤンバルクイナなどの希少種を捕食するため、マングースの駆除(抹殺)を続けている。
マングースの顛末を知り、佐渡ヶ島でのトキの顛末を思い出した。
発端は農作物を食い荒らすサドノウサギ対策として本土からテンを持ち込んだこと。たしかにテンはサドノウサギを捕食したが、それだけにとどまらずトキも捕食することとなった。トキは鳥のくせに動きが鈍重で、警戒心もあまりない。やがてトキは絶滅し、サドノウサギも希少種となった。
慌てた人間はトキを中国からもらい受けて繁殖に乗り出し、サドノウサギも保護することとなった。
人間とはなんて愚かな生き物なのだろう。たしかに人間以外の生き物はAIを開発することなどはできない。しかし、人間のように目先の問題に心を奪われ、トンチンカンなことはしない。
いったい、どっちが賢いのだろう? 真剣に考えても答えが出ない。
(240908 第1237回)
髙久多樂の新刊『紺碧の将』発売中
https://www.compass-point.jp/book/konpeki.html
本サイトの髙久の連載記事
「美しとき」コラム