多樂スパイス

オトコの色気

2012.04.15

 右の写真、さてなんでしょう?

 じつはこれ、カラーとスイートピー。いずれも紫色で、艶やか。白い壁にメチャクチャ映える。まさにオトナの色気である。誕生日のお祝いにいただいたものだが、さぞかしこういうモノの贈り主はオトナの女性だと思うだろう。

 ところがどっこい。じつは、男くさーい男であった。町工場の職人であった。しかも還暦オトコであった(これで、誰なのかわかった?)。こういう意外性って、最高のサプライズだと思う。

 その日、指定された銀座のイタリアンへ出向いた。ストールをなびかせながらやってきたオトコは、いつもながら洒落ている。持っているバッグは、もちろんアレだ。

 「はい、おめでとう!」

 パッと差し出した右手はいかにもモノづくりをしている手。

 ごっつい。それまでに何度も握手をしたことがあるが、大きい手だなあという印象があった。そういう手に握られていたものが、右上の花束だったというわけ。

 

 意外なことをさりげなくできるのが、成熟した大人だと思う。さらに、「能ある鷹は爪隠す」ではないが、ありあまるほどの能力をふだんはベールで覆っているのも大人だ。

 かのオトコはいつも、「オレは町工場の職人だからモノづくりのこと以外、なにも知らないが……」と穏やかな表情で語るが、とんでもないカモフラージュである。あらゆる方面の教養の深さもさることながら、実際、モノづくりだけではなくデザイナーでもあり、ディレクターでもある。

 くだんの職人は、その夜、フランス人の店員とフランス語で流暢に会話していた。彼がフランス語に堪能だったなんて、ついぞ今まで聞いたことがなかった。自分のことをひけらかしたり、くだらない自慢話を延々している人は、どんなに能力があっても無粋にしか見えないが、こういう人こそ粋人というのだろう。

 目指すは、そういう還暦オトコである。

(120415 第333回)

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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