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狂った桜が散るのは

2012.03.21

 私は音楽がないと生きていけないほど、音楽が好きだ。タワーレコードのコピーに、「No Music, No Life」というのがあったが、それに近いかも。

 しかも、クラシック(バロックから近現代まで)、ジャズ(主にスタンダードジャズ)、ポップスまで、幅広く聴いている。ポップスとひとくちに言っても、米英のロック、リズム&ブルースから中南米、アジア、アフリカなどのワールドミュージックまで、まさに雑食といっていい(※韓国と中国ものは聴かない)。

 では、日本のものは聴かないのかといえば、ときどき聴く。

 この季節になると、突如、思い出したように、井上陽水の『氷の世界』を引っ張り出して、聴くことがある。私が中学生の頃、発表された作品だ。陽水はある時期を境に、甘ったるくなりすぎて生理的にダメなのだが、この作品にはソリッドで胸に沁みるナンバーがいくつか収録されている。まぎれもなく名盤といっていいだろう。

 例えば、『桜三月散歩道』。3月になり、桜も風も狂っていく。その描写がすごい。

 

 ねえ君、二人でどこへ行こうと勝手なんだが、

 川のある土地へ行きたいと思っていたのさ

 町へ行けば人が死ぬ

 町へ行けば人が死ぬ

 今は君だけ想って生きよう

 だって人が狂い始めるのは

 だって狂った桜が散るのは三月

 

 もちろん、現実に桜が発狂することはない。それらを見ている、あるいは感じている人間の心がなんとなく狂っていくのだ。啓蟄を過ぎたあたりの、なんとなく心がザワザワした感じを絶妙に表現している。

 さて、この場合の「狂う」とは、通常使われているその言葉の意味とは少し異なると私は思っている。簡単にいえば、冬を終えて、これからいろいろなものがモゾモゾ、ザワザワと動き出す際の、宇宙とのエネルギー交換による「微調整」のようなもの。だから、この季節は、病人にはきつい。健康体の人だって、体調を崩しやすい。陽水はそのあたりのことを、じつに詩的に表現していた。

 やっぱり、とんでもない才能だね、この人は。

(120321 第327回 写真は、神代植物園で見た、オモシロイ木)

 

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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