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人間は進歩しない生き物

2012.03.13

 インドのムンバイ近海のエレファンタ島に広大な石窟寺院がある。その島はシヴァ神信仰の中心地であり、列柱ホールの最深部にある3体のシヴァ神は高さ6メートル弱ほどもある。4世紀から6世紀にかけて造られたと言われているが、どのような手法を使って、壁面にあのような石像を施したのか、想像すらできない。

 

 「インド人、ウソつかない」でも、「どういうアタマの構造か、わからない」。

 

 現在、同寺院は世界遺産に登録されているが、直接足を運ぶと、むごい姿に愕然とする。神像の多くが破壊されているのだ。なんと、17世紀頃、同地にやってきたポルトガル人が銃の練習の標的に用いたというのだ。

 人間というのは、なんと愚かなことをするのだろう。ポルトガルは今や没落した国の象徴のような国だが、そうなってしまったのも天罰としかいいようがない。

 この件に限らず、異教徒の心を踏みにじるような行為は、厳に慎むべきだ。末代まで恨みを買うことになり、しかも、その恨みは時間の経過とともに増幅される。

 大戦前、なぜ、アメリカで排日運動が盛んになったのかという資料のなかで、ポーツマス条約後の「日比谷焼き討ち事件」の際、暴徒が複数のキリスト教会を焼き払い、それに対して日本政府が謝罪しなかったことも遠因ではないかと書かれていた。それによって、ドイツから広がっていた黄禍論に拍車がかかったという。キリスト教に信仰が薄い日本人は、軽く考えていたのかもしれない。しかし、当事者の心の傷は深い。一方、先頃はアフガニスタン駐留の米兵がコーランを焼くという事件が起きた。人間というのは、学ばない生き物だ。

 

 さて、日本人の欠点のひとつに、総括できない、あるいは責任をとらせることをしないというのがあげられる。先の大戦後も、「なぜ、戦争を止められなかったのか」という総括は、ついぞなされなかった。日露戦争の際は、日本海海戦の大勝利に沸き立ち、総括ではなく、論功行賞に終わってしまった。つくづく、日本人は本当の総括ができない民族なのだと思わざるをえない。みんなが身内みたいなものなので、裁きにくいという面もあるのだろう。そうかといえば、行き過ぎた懺悔で思考力がなくなり、日教組のような愚かな組織がのさばるような事態になっている。

 長所を伸ばし、欠点を修正する。人だけじゃなく、国家も同じだと思う。

(120313 第325回 写真は、エレファンタ島の壊された神像)

 

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく陰陽相和す中庸を求める

■本は永遠の師匠

バルザック、ユゴー、デュマなど19世紀フランス文学からヘミングウェイ等の20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの御三家からワーグナーまでのドイツ音楽、フランク、ラヴェル、フォーレなど近代フランス室内楽、バルトーク以降の現代音楽まで、あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■映画は総合芸術だ

『ゴッド・ファーザー3部作』などのマフィアもの、『ニュー・シネマ・パラダイス』、黒澤明のほぼ全作品、007シリーズ、パトリス・ルコント監督作品など、こちらも雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■歴史上の尚友

尊敬する偉人の双璧は、大久保利通と徳川家康。他に幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介。理想主義者、ロマンチストより結果を出したリアリストを評価する

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■隠れ目標

死ぬまで同じライフスタイル

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■追記

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす。かなりの猫好き(愛猫・海=2019年没)、2019年9月、「じぶん創造大学」を設立し、自ら入学(生徒数1名)

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