植物に学ぶか否か
2011.11.16
秋は夕暮れ、と清少納言は書いた。「つるべおとし」のように早変わりする景色の変化を、清少納言はじつに的確に、そして、あでやかに表現した。たしかに、みるみる日が沈んでいくときに見せてくれる自然のショーは、人間がつくった映像では太刀打ちできないほど劇的だ。山や木、あるいは建物のシルエットが近づいたり遠のいたり、朧になったり明瞭になったり……。
また、日に日に色が変わっていく葉は、色彩の魔術師といってもいいだろう。秋になって葉が紅葉するのは、寒さに備えて木が自らを守るため、枝と葉の接着点を遮断することによって光合成を抑えるためにおこるという。その結果、葉緑体がなくなり、葉から緑色が抜けていく。黄色になったりオレンジ色になったり紫色になったりと、色が多彩なのは、もともとその葉がもっている色素によって異なってくるからだという。
そのことだけをとっても、植物の知恵には驚かされる。物言わず、あらゆる活動が超スローなのでわれわれ人間は見落としがちだが、植物の生きる知恵に学ばない手はない。
いま、あらゆる局面で格差が拡大している。その原因は無数にあるが、「植物に学んでいるか、いないか」によっても格差が生じていると思う。どういう格差かといえば、心のあり方における格差である。
(111116 第296回 写真は鹿沼市にある古嶺園の紅葉)
Profile

高久 多美男
(撮影:森 日出夫)
●1959年生まれ
●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立
●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)
●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める
■本は永遠の師匠
19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す
■No Music, No Life
あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食
■生涯、美を求めたい
桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食
■敬愛する歴史上の人物
尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介
■思索の遊び
禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中
■いやなもの
共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教
■その他
日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす
