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紺碧の将

コウノトリの郷に見る、本質の理

2021.09.27

 2011年の暮れ、『Japanist』の対談の取材で全国野鳥の会会長・柳生博氏にお会いした。その時のお話はじつに印象深いものばかりだったが、なかでも兵庫県豊岡市で取り組んでいるコウノトリの繁殖事業のお話は面白かった。

 コウノトリが国内で絶滅したのは、農薬の影響が大きい。肉食のコウノトリは農薬によって死んだ生き物の死体も食べるからだ。それによってコウノトリは激減し、ついにわが国から姿を消した。

 国が重い腰を上げた。2005年、ロシアから寄贈された雌雄をもとに兵庫県北部の但馬地域を中心に繁殖事業を始めた。

 まず、やるべきことは農薬を使わない稲作に切り替えること、そして生態系を取り戻すことである。この取り組みはめざましい成果をあげ、現在では200羽を超えるコウノトリが自然繁殖し、野生に復帰している。

 柳生さんが指摘したことは、コウノトリのために大変な努力をした地域の農業生産者に予想外の見返りがあったこと。但馬地域のコメが「コウノトリが自然に繁殖できる生態系のなかで育った無農薬のコメ」として評価が高まったのだ。人間が目先の利益を追い求めてやったことには予想もしない〝しっぺ返し〟があるものだが、反面、自然の生態系を取り戻そうと努力したことが予想もしなかった(あるいは綿密に予想したかもしれないが)報酬をもたらしたのだ。

 姫路城へ行ったあと、豊岡市の「兵庫県立コウノトリの郷公園」へ行った。コウノトリ記念館と兵庫県立大学豊岡コウノトリキャンパスが併設され、青々とした水田にはテレビで見たことのある塔巣(コウノトリが巣をつくるための人工的な塔)が立っていた。産官学が協調したことによる素晴らしい成果である。

 嬉しいのは、豊岡の取り組みが他県に波及していること。今では栃木県、福井県、京都府、徳島県、鳥取県、島根県でも取り組みがなされ、それぞれ成果をあげているという。

 記念館の学芸員の説明も面白かった。コウノトリはヘビを丸呑みしてしまう。呑み込んだあと、胃の中でヘビがのたうち回らないのかと余計な心配をし、かつまたリアルに想像してしまったが、コウノトリにとっては栄養満点のエサなのだろう。

 

遠くに見える細い塔が巣塔

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コウノトリの巣は想像以上に大きい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兵庫県立大学コウノトリキャンパス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

農業用の水路もさまざまな生き物が棲めるよう工夫されている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

塔巣

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(210927 第1095回)

 

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