死ぬまでに読むべき300冊の本
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紺碧の将

クリエイティブな人々のクリエイティブでない日々

file.092『天才たちの日課』メイソン・カリー著 金原瑞人・石田文子訳 フィルム・アート社

 

 小説家、詩人、作曲家、哲学者、研究者、映画監督などクリエイティブな活動で名を残した161人の生活習慣(日常の生活リズム)を紹介したもの。「クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」という副題が本書の主旨を端的に物語っている。

 これを読むと、クリエイティブな成果をあげた人の多くが、単調な生活習慣のうえに独創的な仕事を築きあげたということがわかる。

 彼らは規則正しい生活をしなさいと言われてそうしたのではない。どうすれば自らの創造力を高め、いい仕事ができるのかを考えた末、たどり着いたのがそれだったのだ。本書中でウィリアム・ジェイムズが「日常のこまごました事柄を、努力せずに無意識に行えるようにしてしまえば、その分、頭脳に余裕ができ、よりレベルの高い仕事ができるようになる」と語っている。

 161人の多くが朝早く起き、午前中集中して仕事をし、午後はペースを落とすという生活リズムを送っていた。朝、昇り始めた太陽は午後沈んで行く。この流れに沿った仕事の仕方こそ、能率が高いということに気づいたのだろう。一方で夜型の人は、創作の持続力が短かいという印象を受ける。

 本書に登場する人の生活リズムを少し紹介しよう。

 ヘミングウェイは夜明けとともに起き、午前中だけ立ったまま執筆し、午後は人生を楽しんだ。ヘンリー・ミラーは「歳をとるにつれて、午後の仕事は必要ないし、しないほうがいいと思うようになってきた」と語っている。ギュンター・グラスは「夜、書くと考えてぞっとした。ぜったいにありえない。夜書くなんていいこととは思えない。だって、あまりにも簡単に書けてしまう。それを朝読んだら、うんざりするに決まってる」と言っているが、これについては筆者にも思い当たるフシがある。夜書いたものは、ひとりよがりになりがちだ。

 村上春樹は長編を書いているとき、午前4時に起き、5、6時間ぶっとおしで仕事をしたあと、午後はランニングか水泳をして、雑用を片づけ、本を読んで音楽を聞き、9時に寝るという日課を変えることなく繰り返しているという。ストラヴィンスキーは8時ごろに起きて運動をして、そのあと休憩なしに9時から1時まで仕事をして、それほど労力を要しない仕事は午後に行なっていた。とても理にかなっている。

 アル・ハーシュフェルドは99歳で亡くなる直前まで同じ日課を続け、時には寝ているあいだも仕事をしていたという(筆者もときどき夢のなかで仕事をしている)。

 その他、この本にはいくつもの〝生活のリズムのヒント〟がある。

 

 筆者もどうしたら快適に集中力を持続させることができるかを考え、長い期間、試行錯誤しながら自分なりのリズムをつかんだ。それによって得た心持ちは、「私は毎日仕事をする。だが、私にとって、仕事は仕事じゃない。単に日々やっていることで、それが私の生活なんだ」というスティーブン・ジェイ・グールドの言葉そのままである。

 

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