自分の体が発する声を聞いて〝食い改める〟
近年、食事の回数を減らす健康法が定着した感があるが、それを最初に提唱した〝元祖〟が石原結實氏であり、その代表作が本書である。
石原氏はもともと西洋医学を学び、医師になったが、独自の療法を確立させた背景には、自身の体験がある。高校時代、過敏性大腸炎を患い、西洋医療では治らなかったが、玄米を摂るなどの自然療法によってすっかり治ってしまったという。それから、病気はなぜ起こるのだろう、病気を治すということはどういうことなのかと深く考えるようになり、「食べない健康法」に行き着いた。
以来、40年間休みなく働き続け、50年間薬を飲んだことがないというのだから説得力はじゅうぶんだ。日本人は世界でも突出して多く健康診断を受けているが、病気は一向に減っていないどころか、増え続けている。
石原氏の唱える「食べない健康法」とはどのようなものだろう。
その前に、ひとつ注意しなければならないことがある。「食べない」はあくまで出版社が売るためにつけたタイトル。そうではなく、「食べ過ぎない」が正しい表現だということ。食べることは生きる力の源泉でもある。それを否定しては健康になるはずがない。むしろ、なにを、どのように食べるかが重要である。
石原氏は、「すべての病気は、血行の停滞からきている」と考えた。血液の流れを阻害するものは、「食べ過ぎ」と「冷え」である。その基になったのは、「万病一元、血液の汚れ」という東洋医学の根本だった。病気のすべては血液の汚れからきており、血液の汚れは食べ物に由来するということ。
病気を防ぐ力が免疫力。食べ過ぎると血液中の白血球が満腹状態になり、外からばい菌が入ってきてもじゅうぶんに仕事をしなくなる。つまり免疫力が下がる。食べ物を摂取すると血液が胃腸や肝臓、すい臓などの消化器系に集まるため、他の部位の血流が少なくなる。それによって血行が悪くなり、体温が下がるという悪循環に陥る。そのため、食間は適度に空ける必要がある。
石原氏は、こう語る。
「人間の体はよくできているんです。もっと人間の体が発信していることに耳を傾ける必要があります。発熱は、老廃物が燃焼されている現象ですし、食欲不振は老廃物を作り、血液を汚す元凶である食物の摂りすぎを一時的にストップさせようとする反応です。つまり病気をして食欲がなくなるのは、免疫力を高めるための自然の反応なのです。それなのに薬で熱を下げたり、〝栄養をつけないとダメ!〟という理屈で、無理矢理食事を摂るのは自然の理に反しています」
また、ガンについてこうも語る。
「西洋医学では、ガンを手術で取り去る、放射線で焼却する、抗がん剤で抹殺するなどをするだけで、ガンが発生した原因に対しては何も処置しません。私は、人間の体はいつも良くしよう、長生きしようといろいろな反応をする能力を備えていると考えています。それが自然治癒力です。私が敬愛する森下敬一先生は、種々の動物実験から、ガンは血液の汚れを浄化している装置であると結論づけました。人間の体が悪性になってしまったので、それを良くしようという反応のひとつがガンなのだと」
最後に石原式健康法にふれたい。
まず、3食のうち1食を抜き、その代わり、日に3度、ニンジンとリンゴを混ぜたジュースを飲む、ショウガなど体を温める陽性食品を多めに摂る、動物性脂肪の摂りすぎを控え、魚介類や植物油をじゅうぶんに摂る、運動をして筋肉を鍛える(脂肪と筋肉では発熱量が異なるから)、酒が好きな人はほどほどに飲酒をするなど、誰でも実行できる内容だ。
世に健康に関する本は山ほどあるが、この1冊だけでじゅうぶんである。
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