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紺碧の将

ロックがもっとも進化を遂げた時代

file.081『こわれもの』イエス

 1960年代後半から急速に進化を遂げたロック界。その最終段階は、70年代に入ってクラシックの形式を融合させたプログレッシヴ・ロックであろう。ピンク・フロイド、キング・クリムゾン、エマーソン・レイク&パーマー、ジェネシス、イエスがその代表的なグループだ。それまでのロックの概念を一新する、長大な作品が多かった。
 その頃、思った。このなかで、ずっと聴き続けられるのは何枚あるのだろうと。

 なぜなら、progressiveという言葉自体に、すでに期限付きの概念が含まれている。「進歩的」とは自己否定を前提にした言葉だともいえる。つねに進歩するのだから。「進歩的知識人」という言葉もそうだが、うさんくささも含んでいる。

 あれから50年経過し、冷静に判断すると、イエスの『こわれもの』(1972年発売)と『危機』が最高レベルに達した作品だという確信が深まった。いつ聴いても〝進歩的〟なのだ。ほかはピンク・フロイドの『炎』とキング・クリムゾンの『太陽と戦慄』(file.no071)くらいか。当時、絶大な評価を受けていたフロイドの『狂気』は今となっては古臭さを否めない。人間の精神に潜むDark Sideをコンセプトにしたというアプローチは今でも新鮮だが、いかんせんコンピュータを前面に出したサウンドは古過ぎる。

『こわれもの』(ついでに『危機』も)は、すべてのパフォーマンスが高いレベルで結実している。アイデアと起伏に富み、いっときも退屈させない。ジョンの声は中性的で、随所にコーラスとの掛け合いがある。ギターソロだけの曲、ウェイクマンが超絶技巧を披瀝する曲など、聴きどころも満載。

 ジャケット・アートもいい。宇宙に浮かぶ星は、地表の樹々から判断すると、直径数百メートルの大きさ。人力の飛行船がその惑星に向かって飛んでいる。

 私はレコードとCDで持っているが、CDにはサイモン&ガーファンクルの「アメリカ」が収録されている。はっきり言って、これは要らない。アレンジがひどいし、全体の調和が乱れてしまう。このアルバムに限らず、CD化の際、オリジナルの曲編成にオマケするという形で別バージョンなどを盛りだくさんにするケースが多いが、よけいなおせっかいだ。オリジナルの構成を大切にしなきゃ。

 

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