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紺碧の将

ロックが到達した頂点のひとつ

file.046『レッド・ツェッペリンⅣ』レッド・ツェッペリン

 レッド・ツェッペリンの4枚目のアルバム、「レッド・ツェッペリンⅣ」(1971年)は、泣く子も黙るロックの名盤。

 じつは、本作には正式なタイトルがない。タイトルの代わりに、右下の図柄がついている。人はこの作品を呼ぶために、図柄をヒントにさまざまな呼称を考えた。4つのシンボルが並んでいるから「フォー・シンボルズ」あるいは単に「シンボルズ」、そのシンボルがルーン文字に由来するといういわれから「ルーン・アルバム」、左端のシンボルがZOSOという文字に見えることで「ZOSO」……。結局、バンドの4作目という単純な理由で「レッド・ツェッペリン IV」(Led Zeppelin IV)という呼称が定着した。

 4つのシンボルは、4人のメンバーを表している。左からジミー・ペイジ(g)、ジョン・ポール・ジョーンズ(b)、ジョン・ボーナム(ds)、ロバート・プラント(vo)。ペイジとプラントのシンボルは自身でデザインしたが、他の二人は「Book of Signs」という本の中から選んだという。

 アルバムの中身に入ろう。レッド・ツェッペリンは、1970年代後半に出現したニュー・ウェーブの人たちから「オールド・ウェーブ」の代表格のような見方をされたが、デビューから50年以上が経過し、けっして一過性のバンドではなかったことが証明された。

 なんていっても彼らの最大の功績は、白人としてのロックを極めたことだろう。

 歌唱力やリズム感など音楽表現の領域において、黒人の能力が他を圧倒していることは議論の余地がない。黒人以外のだれもがロバータ・フラックやユッスー・ンドゥールのように歌うことはできない。特に〝縦ノリのリズム〟をやらせたら黒人の独壇場だ(日本人は盆踊りに代表されるような横ノリ)。

 そのことを知悉していたのか、レッド・ツェッペリンの4人は独自の音楽スタイル、リズム・スタイルを築き上げた。リズムにおいては、ブレス(息継ぎ)を多用し、ブロック(塊)によって、あたかも壮大な建築物のような構造を作りえたこと。歌唱においては、頭のてっぺんから出しているのではないかと思えような超ハイトーンの肉食獣的歌唱法を編み出したこと。ドラミングにおいては、変速のリズムを自在に操り、独特のグルーブ感を生み出したこと。さらに、硬質で重量感のあるフレーズを多用したジミー・ペイジのギターや疾走感のあるベースラインなど、他のだれもがやらなかったことを組み合わせ、唯一無二のバンドとなった。

 そのようなスタイルは、のちに『プレゼンス』によって完成を見るが、その端緒がこのアルバムのオープニングを飾る「ブラック・ドッグ(Black Dog)」に表れている。音の塊が実物のような存在感をもって迫ってくる。

 続く「ロックンロール(Rock and Roll)」では、ロックの基本はこうだよと言わんばかりに、胸のすくような、疾風怒濤の原初的ロックを披露する。また「天国への階段(Stairway to Heaven)」は、静から動へ、アコースティックからエレクトリックへと展開する構成が光るツェッペリンの代表的なナンバー。この曲におけるジミー・ペイジのギターワークは、ロック史に残るだろう。ほかに、プラントとサンディー・デニー(女性ヴォーカル)の幻惑的なハーモニーが印象的な「限りなき戦い(The Battle of Evermore)」もいい。ペイジの奏でる音は、マンドリンのような響きを発している。ちなみに、ツェッペリンの曲でプラント以外の人物がリードヴォーカルをとったのはこの曲だけである。

 本作は1971年秋、全世界で同時発売され、これまでの累計売上枚数は3700万枚を越えているという。まさにお化けアルバムである。

 ツェッペリンの独自性を担保していた「塊スタイル」(髙久命名)を支えたジョン・ボーナムが死んだのち、替りのドラマーを入れることなく解散させたことは、賢明な判断だったのかもしれない。だれが加入しても、ジョン・ボーナムの代役は務められなかったはずだ。

 私は日常的にレッド・ツェッペリンを聴くことはないが、ときどき無性に聴きたくなる。どういうときかといえば、気力・体力がみなぎっているときである。そういう意味では、レッド・ツェッペリンは自分の調子を計るバロメーターでもある。

 

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