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紺碧の将

古きものと新しきもの

2020.12.15

 仕事の拠点を市ヶ谷から京橋へ変えたことによって、東京駅周辺で会食することが多くなった。東京駅近辺は丸の内側、八重洲側に加えて、オリンピックのためか駅構内の飲食店エリアの整備が進み、飲食店の数でいえば地方都市を数十も束ねたほどひしめきあっている。群を抜いて世界一だろう。

 競争が激しいためか、どの店も創意工夫し、価格もむしろ地方よりリーズナブルだ。利用者にとっては選び放題の天国である。

 飲んだあと、まっすぐ東京駅へ向かわず、ちょっと寄り道散歩することがある。特に丸の内側は旧江戸城(現皇居)があり、歴史的遺構があるのだ。

 江戸城木橋の形を復元した和田倉橋という木橋がある。欄干の擬宝珠は、復元する前の橋に用いられていたものを使用しているという。可能な限り以前使われていたものを使用するのは復元の定石だ。

 和田倉橋を渡ると和田倉門がある。現在は石垣しか残されていないが、江戸時代は「蔵の御門」と呼ばれ、武士だけが通ることを許されていた。

 門から内側へ入り、ほどなく足が止まった。江戸城遺構の石垣とそれ越しに見えるビル群の調和が美しかったからだ。これぞまさに不易流行だと思った。

 古きものを活かしながら新しきものをつくる。やみくもに古いものを残せばいいのではなく、かといって古いものを壊して新しいものにするばかりでは能がない。両者のバランスをうまくとることに都市づくりの鍵があるのではないか。東京駅近辺には、歴史的建造物の一部を活かしつつ新しいビルと調和させている例もたくさんある。街の品格は、そういうところに現れる。

(201215 第1045回)

 

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