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激動の時代の生き証人

2020.04.28

 明治神宮本殿のすぐ近くに驚くべき樹がある。近くで葉っぱをさらっていたおじさんに聞けば、間違いなく椎ノ木だという。

 根本に注目。瘤が幾重にもつき、異様を呈している。人面に見えるところもある。以前、秋田県の「あがりこ大王」(ブナ)を尋ねたことがあるが、太い幹は瘤だらけで、なにやらこの世のものとは思えなかった。地元の人々が薪にするため枝を伐採し、それが瘤になったと聞いた。

 では、この椎ノ木はなぜこういう姿になったのか。日本人から崇敬を集める神社の本殿のすぐ近くに生えているのだから、誰かが枝を伐ったということはないはず。空襲を受けたわけでもない。

 見れば見るほど、疑問が増す。

 思えば、明治神宮の創建は大正9(1920)年。3年後の関東大震災をはじめ、昭和恐慌、大東亜戦争と、それまで日本史になかった困難を幾度も乗り越えている。いわば、この椎ノ木は激動の昭和を見守ってきた生き証人でもある。

 境内に明治天皇の御製と昭憲皇太后の御歌が掲げられている。

 

 いそのかみ 古きためしを たづねつつ 新しき世の こともさだめむ

(わが国の古来より伝わる先例のもとつ心を探りながら、新しき時代のさまざまなことも定めてゆこう)

 

 まさしく松尾芭蕉の説く「不易流行」の精神そのものだ。

 しかし、明治天皇が直面することになるのは、欧米列強の侵略をはじめ、過酷な事態ばかりだった。当時、すでに天皇の政治における決定権がなかった時代、明治天皇の苦悩はいかばかりだったか。神となられたあとのこの国の危難をどう受け止めておられたか。

 この椎ノ木を見ると、さまざまな想念が湧いてくる。

 

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(200428 第988回)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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