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地下を旅してきた水

2019.09.09

 自然の営みは、時間のスパンが人間と異なる。一口にいえば、かなり長い。長い時間をかけて、ゆっくりアジャストしている。それで平衡を保っているのだ。

 静岡県清水町に、大量の湧き水が出るところがある。柿田川の湧水地がそれだ。柿田川湧水公園でその清らかな湧水を見ることができる。

 湧水量は一日約100万立法メートル。ケタが大きすぎて、どれくらい多いのかわからない。東洋一という説もある。

 その湧き水、なんと富士山に降った雨や雪が地下の三島溶岩流に浸透し、30年近くかけてじっくりろ過され、地上に湧き上がっているのだという。なんという時間の長さ! なんという自然の調節機能!

 意識を凝らし、自分が雨になったつもりでイメージする。富士山に降ったあと、徐々に地下に沁み込み、岩の間の微妙な隙間を流れ、少しずつ下ってくる。途中、行く手を阻まれる断層があったり、固い岩があったり……。それでもあきらめない。気の遠くなるような時間をかけ、岩のなかを進む。一日に進む距離はわずか数センチかもしれない。それでも前へ進む。「千里の行も足下より始まる」である。

 清水町あたりまで下ってきてから地上に上がるための仕掛けはわからないが、間断なくボコボコと湧き出る様子を見ると、自然の力は想像を絶するとあらためて思い知る。湧水に撹拌され、砂が渦を巻いている。

 地下を抜けてくるため、水温は年間を通じ、約15度。そのため、湧水地の近辺は夏でも涼しい。まさに天然のクーラーである。

 日本には、まだ見ぬ素晴らしいところがある。名の知られた観光地ばかりではなく、自分が心底感動できる場所を探すことも楽しみのひとつであるし、その人のセンスを発揮できるポイントであろう。

 

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(190909 第930回)

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