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新国立競技場、本物の「杜」へ

2017.09.01

 2020年、東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設が進んでいる。約10メートル掘り下げた位置にフィールドを設け、最大8万人収容のスタンドをすり鉢状に配置という設計だ。

 建築家。隈研吾氏によるもの。

 私が隈氏を信頼するのは、「どうだ、まいったかぁ!」という、はったりのような建物を造らないこと。彼の著書にもあるように、彼の建築のコンセプトは「負ける建築」。「負ける」と書くと、なにやらマイナスのイメージを持つ人もいると思うが、建築物が環境を威圧しないという考え方は、自然と共生してきた日本人の心性に合っているし、時代の宿命でもある。

 おそらく、「本物」であれば、アヴァンギャルドな建築物であっても、時間の経過とともに周囲と調和していくはず。ルーブル美術館のガラスのピラミッドしかり、ポンピドーセンターしかり、グッゲンハイム美術館しかり。しかし、斬新さを狙ったもので風化しないのは、ごく一部だ。大半は、時とともに、厚化粧したおばあさんが大量に汗をかいたような状態になる。

 

 私たちの祖先は、素晴らしいお手本を示してくれた。そのひとつが、大正期につくられた明治神宮である。内苑は150年後を見据えて森づくりがなされた。当代きっての植物学者が綿密にプランを描き、全国から篤志として樹木を集め、代々木の湿地に植えた。その人たちのおかげで、私たちはあの森の恵みを享受することができる。

 また、外苑はスポーツの聖地として、現代に受け継がれている。

 今造っている競技場もその一角にある。敷地にはスダジイやケヤキを66,000本、他にツタなど234,000鉢も植えるという。それらが時の経過とともに「負ける建築」と調和していくプロセスを楽しみたい。歴史とはそういうものだろう。

 ザハ・ハディド氏の案が撤回されて、ほんとうに良かったと思っている。

(170901 第748回 写真上は、仙寿庵交差点から見たイメージ図。下は工事中の風景)

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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