多樂スパイス

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美し人
ココロバエ

とろける正月

2017.01.07

%e5%b9%bb%e3%81%a8%e6%b7%b1%e6%be%a4%e7%9b%b4%e4%ba%ba%e9%85%92%e5%99%a8 昨年の12月、神戸で本の最後の打ち合わせをした時、知人から日本酒をいただいた。それが黒箱に入った純米大吟醸原酒「幻(まぼろし)」。いかにも〝極上の酒〟といったオーラを醸していた。広島県竹原市の中尾醸造が造っている限定品だ。

 竹原市といえば、ニッカウヰスキーとくるが、私は以前『Japanist』の取材で藤井酒造を訪れたことがある。知人曰く、「地元では中尾醸造の方が評価が高いらしいです」。
 その逸品を正月にいただいた。
 私は夏でもほとんど熱燗で飲む。しかも、辛口が好みだ。日本酒度でいえば、10前後。もちろん、醸造アルコールを添加しているのは飲まない。
 この「幻」は日本酒±0。ふだん、自分では絶対に手を出さないカテゴリーだ。
 それを冷でいただいた。
 器は昨年秋、黒龍酒造の新酒の発表会に招かれた時にもらった深澤直人氏がデザインしたガラスの酒器。ふだん、熱燗なのでガラスの酒器はあまり出番がない。
 深澤氏といえば、ずっと以前、シャチハタから依頼された印鑑を作った時の、彼のデザイン思想が印象に残っている。「形」というものを「本質」からとらえている。素敵な人だと思った(当日の発表会では本人と会うこともできた)。
 旨い!
 思わず言葉がほとばしり出た。
 雑味がないのに、インパクトがある。清純なのに、濃厚。まろやかなのにガツンとくる。相反する要素が口のなかで交差する。
 ガラスの酒器もぴったりだ。口が広いため、芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。とろけそうな気分になった。このお酒、ネットを見ると、蔵伝承の「リンゴ酵母」で醸したとある。
 ベートーヴェンの「第九」を聴きながら、うっとりしてしまった正月のひとコマだった。
 S様、ありがとうございました。この場を借りて、お礼申し上げます。(170107 第691回 写真は「まぼろし」と深澤直人氏作ガラスの酒器)

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田口佳史講座ライブ配信
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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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