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ココロバエ
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歩行困難になった海

2015.07.12

病気の海1 いつものようにランニングを終えて戻ると、娘が血相を変えて「パパァ、海を病院へ連れて行って」と言う。なにごとかと聞くと、急に歩けなくなってしまったと。

 見ると、座ったまま動くことができず、ニャーニャーと鳴くばかり。本人も何が起こったのかわからなくて、鳴くしかないという感じだ。
 このネコは本ブログに10回くらい登場しているので、覚えておいでの方もいるだろう。ただのキジトラだが、こんなに家族と濃密に過ごしたネコはこいつ以外にない。毎朝、眠っている私の耳元にやって来ては「ニャア!」とひと鳴きし、戻って行く。つまり、「目覚ましネコ」としても大活躍だったのだ。

 診察してもらい、いろいろ検査をした。レントゲン撮影、血液検査や内臓を超音波で見たり……。血液検査の結果はすぐにわからないが、レントゲン撮影などの結果から判断すると、心臓の老化現象に伴い、血栓ができやすい状態になっていて、それが脚にきているのではないか。さらに肺水腫の可能性もある。また、4年ほど前に発症した喘息によって気管支が硬くなっているなど、老化による多重障害の可能性を指摘された。それもそうだろう。1999年の海の日に拾ったのだから、現在16歳。人間であれば、80歳に近い。

 数年前までマリリンという、もう一匹のネコがいた。彼女は23歳まで生きた。最後は顔がグジャグジャになり、目も見えない状態だった。体は枯れ枝のようになった。それでも完璧と言えるくらい、寿命をまっとうした。死ぬ前日まで立って歩いていたし、粗相をしたのも死ぬ直前くらいだった。買い主にも懐かないネコだったが、死に方は教えてもらった。
病気の海2 だんだん、海がマリリンの享年に近づくにつれ、いったいいつ、衰えていくのだろうと思っていた。写真のように、まだまだ毛並みもいいし、そのうち死ぬなどとは思えなかったのだ。
 歩けなくなると、生き物の衰えは早い。この2日間で一気に弱々しくなってしまった。歩く姿が痛々しいのだ。
 朝、私を起こしに来ることもなくなってしまった。日常、あたりまえのようにあった行為がなくなっていくというのは、じつに寂しいものだ。あらためて、命の有限である理を突きつけられたような気分である。
 ところで、今回お世話になっている動物病院だが、神宮外苑の一角にある小さなクリニックで、ネコ専門である。診察は入念で、質問は多岐に及んだ。自宅に戻ってからも電話で容態を説明し、それに応じて投薬のアドバイスをくれる。休診日になにかあったらと、携帯番号まで教えてくれた。
 ふと思った。これは人間様の診療より数倍も数十倍もていねいではないかと。
 私はふだん病院へ行かないが、3時間待ちの3分間診療とはよく聞く話。本来、人の体を診るというのは、こういうことだよなあと妙に感心してしまった。
 治療によって延命できても、やがて命の終焉はやってくる。それまで、悔いのないよう、できる限りの交流を続けたい。なにしろ、ともに生きてきた家族なのだから。
(150712 第565回 写真上は力なく寝そべる海)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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