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地球の底を歩く旅

2014.10.12

大谷石採掘場跡地下空間 前回、前々回と岩手へ行った話を書いたが、同行したネイザン・エルカート君が日本の建築に関心があり、大谷石の産地を見たいということだったので岩手へ向かう前に宇都宮の大谷資料館を訪れた。

 大谷石とは宇都宮西部の大谷地区で産出される石材で、柔らかい風合いが特長だ。フランク・ロイド・ライトが設計した旧帝国ホテルで使われ、その存在が知られるようになった。
 特に「ミソ」と呼ばれる部分がミソだ。ところどころにある、焦げ茶色の空洞化した部分で、もともとは火山弾が変質し、隙間に空気が入って粘土化したものと考えられている。
 柔らかい石なので構造材には向かないが、外壁や化粧板などには適している。石なのに、温もりがあるのだ。
 大谷資料館は、採掘現場の跡地を公開しているところだ。最近、経営者が変わったようで、以前とちがって活気がある。駐車場には大型の観光バスが数台停まっていた。
 入り口に観光ポスターが掲示されているが、これはかなり前に私が制作したものだ。コピーは「地球の底を歩く旅」。まだこのポスターが使われていたのかと感慨深い。
大谷石の山 壁に設えられた階段を降りていくと、文字通り、地底空間が広がっている。地球の底というには少々大げさだが、実際に歩いてみると、地球の内部はこうだったんだという驚きもある。ネイザンも感動していた。
 宇都宮には大谷石の蔵がたくさんある。以前、使われなくなった石蔵は「汚らしい物」と思われ、その多くが取り壊されていた。風向きが変わったのは、若い世代が石蔵をモダンなカフェやレストランに改装し、活用するようになってからだ。高根沢町のJR宝積寺駅前には隈研吾氏の設計による、有名な「ちょっ蔵広場」があるが、あれなどもその典型的な活用例だろう。ちなみに、取り壊される運命にあったその石蔵群に新たな命を吹き込んだのは、当時の町長だった高橋克法氏(現・参議院議員)だ。

 地元では価値がなくなったものに脚光を浴びせ、新しい価値を見出していくのはだいたいが「よそ者」と「バカ者」だが、大谷石採掘現場の跡地や石蔵が再び見直されるようになったのもまさにそういう人たちのおかげだ。
 日本は地方創成が新たなテーマだが、役所があれこれ決めても効果は上がらない。よそ者とバカ者が自由に活動できる条件を整えることこそ、その鍵になると私は思っている。
(141012 第526回 写真上は大谷資料館内部、下は大谷石の山)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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