多樂スパイス

ADVERTISING

ココロバエ
ココロバエ

緑の庭

2014.07.28

緑の庭 仕事柄、いろいろな案内が届く。美術展、コンサート、政治集会、企業セミナー、各種展覧会のレセプション……。その都度、顔を出していたら、仕事が捗らなくなってしまうので大半はパスするのだが、先日、ひと目見るなり、興味をそそられた展覧会があった。

 11人の若い女性画家によるグループ展だ。案内のパンフレットに掲載されていた作品に釘付けになった。風に草がなびいている絵だ。「本物を見てみたい」と思った。会場を見ると、大阪駅前のデパートとある。
 大阪の友人と会う用事をつくり、展覧会場へ行った。目指す絵は、すぐに見つかった。それが右上の作品『緑の庭』だ。B5判ほどの小ぶりなサイズなので、なんとか手の届く範囲だ。私が熱心にその絵を見ていると、作家本人が説明にきた。デパートの美術画廊でグループ展ということもあり、売らなければならないのだろう。でも、明らかにセールストーク(?)は板についていなかった。それがまた好感をもつ理由でもあった。
 将来を期するという気持ちを込めて、その作品を購入した。油彩とテンペラを併用したその作品は、まさしく風を感じさせてくれる。作者の名前はあえて伏せておこう。
 「風を描きたいと思ったんです」
 若い画家はそう言った。
 そうかあ、目に見えないものをよくぞ描こうと思ったね、と答えた。
 「少し、空想も交じっています」
 恥ずかしそうに彼女は言った。
 それはそうだろうね。それにしても、描き方が変わっているね。
 「……」
 それ以上は説明ができない様子だった。

 風を描きたいと思う心境は、実際、どんなものだろうと思った。明らかにモチーフとして地味である。もっと派手な作品はいくつもあった。だからなのだろう、その人の作品に赤い札はほとんどなかった。でも、私は他の人の作品より、その作品の方が断然いいと思った。
 後日、送られてきた絵は、現在、書斎の壁に飾っている。ちょうどパソコンの上だ。場所もとらないし、あまり存在感を主張しない。にもかかわらず、いい感じだ。ちょっと息抜きしようかなと思って上に目をやると、その絵が目に入る。そして、爽やかな涼風を感じさせてくれる。
 人間はなぜ、絵を描くのだろう。絵を見たいと思うのだろう。
(140728 第515回)

ADVERTISING

田口佳史講座ライブ配信
田口佳史講座ライブ配信

Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

多樂塾

Topics

記事一覧へ
Recommend Contents
このページのトップへ