多樂スパイス

人間の限界

2014.07.07

稲田弘 右の写真の人、さて、いくつに見えるでしょう?

 答えは、81歳。
 前回のこの欄で、『Japanist』次号に掲載する「超元気なシニア男性」3人について触れたが、その一人、稲田弘(いなだ・ひろむ)氏である。
 稲田氏は昨年、80歳でアイアンマン世界選手権大会シニアの部で優勝した強者。疾風怒濤の如く走る姿は、とても81歳とは思えない。まさに「アイアンマン」である。
 人間はさまざまだ。20代で早くも肥満になり、成人病に罹る人もいれば、稲田氏のような人もいる。もちろん、稲田氏の「健全な肉体と精神」は棚からぼた餅で手に入ったわけではない。日頃の練習、そして生活態度の賜である。
 日本人男性の平均寿命はついに80歳の大台に乗った。しかし、健康寿命となるとどうなのだろう。せっかくもらった命なのだから、最期まで体も心も爽快であり続けたい。そう思うのは、私だけではないだろう。にもかかわらず、個人差がかくも激しくついてしまうところに人間の奥深さがある。
三浦・中田対談 80歳でエベレストに登頂した三浦雄一郎氏も言っていた。現代人は守りの健康法ばかりだと。健康のためにこれをしてはいけない、これを食べてはいけない、と「消去法」ばかりに意識がいっている、と。それも大切かもしれないが、もっと積極的な健康法を取り入れるべきだという。
 例えば、自分にとってギリギリの目標を定め、それに向けて努力するということ。簡単にクリアできる目標ではいけない。喜びも達成感も少ないからだ。
 三浦氏は父親が素晴らしい手本を示してくれたことによって、独自の哲学をもつに至った。次の目標は、85歳で8000メートル級の山に登り、そこからスキーで滑降することだという。
 稲田氏は、生活のすべてがトライアスロンだ。日々、筋肉を意識しながら生活し、食事にも注意をはらっている。コーチも驚いていた。「あの人があんなに厳しいトレーニングをするのだから、われわれも頑張らなきゃ」と。
 「そんな風にしてまでやりたくないよ」、そう聞こえてきそうである。
 私もマネをしたいとは思わない。しかし、心意気は参考にできる。
 81歳にして夢を語る姿は、若者そのもの。次の目標は83歳で世界チャンプになることだという。そういう姿が、後生の人たちにどれほど勇気を与えることか。
 ほんとうに素晴らしい人の話を聞く機会を得た。
(140707 第512回 写真上はアイアンマンレース中の稲田弘氏。下は対談中の三浦雄一郎氏と中田宏氏)

Profile

高久多美男

高久 多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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