30年の思いを一冊に凝縮
地球環境の危機が叫ばれて久しいが、森林の急速な減少も大きな問題となっている。今、一年間でほぼ日本全土に匹敵するくらいの森林が消滅しているという。建築材として伐採されているからだ。
では、その輸入元はどこか?
それが、わが国・日本なのである。つまり、日本は世界の森林伐採の元凶となっているともいえる。
そのことをずっと憂えている人がいる。 以前、『Japanist』でも紹介させていただいた田中束(つがね)氏。田中氏は、一年草である高粱を使って木材を量産すれば世界の森林伐採を防ぐことができると着想を得、商品開発を始めた。以来、30年以上、寝ても覚めても高粱のことを考え続け、ついには自社の無公害接着剤を用いて商品開発に成功した。
〝成功とは、成功するまで続けること〟とは松下幸之助の弁だが、自分の信念に基づいて何十年もやり続けるためにはある楽観性が必要だ。つまり、どんなに逆境にあっても、悪い面を見ずにいい面を見るということ。まさに田中氏は、そんな天真爛漫ともいえるほどの楽観性を備えた人物である。だからこそ30年越しの開発なのである。
その田中氏が著した、『高粱の一粒』という本がジャパニスト出版より刊行された。ちなみに「高粱」は「コーリャン」と読み、「ジャパニスト出版」は以前の「神楽サロン出版」であり、盟友・奥山秀朗氏が経営している。
この本の原稿を見せていただいたのは、今年の4月上旬。その後、私が手を入れ、編集することになったのだが、想像以上に時間がかかってしまった。編集だけで5ヶ月もかかってしまったのは初めてのことだ。田中氏の「思い」を疎かにしてはいけないという「思い」があったからだ。気がつけば350ページくらいの文量になっていた。でも、その甲斐あって、品格のある本になったと思う。
本書は、本サイトからもご注文いただけます。
(131126 第469回)