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美し人
ココロバエ

花のきもち

2013.10.10

椿 植物を尊敬している。

 そう言うと、「えーー!!!!?」という表情をする人がときどきいるが、とくだん驚くようなことを言っているわけではないと思っている。

 地球46億年の歴史を1年にたとえてみると、人類が誕生したのは12月31日の23時49分だという。つまり、われわれ人間があずかり知らない歴史を、この地球は有しているわけだ。しかも、地球は時速約10万キロのスピードで太陽の周りを公転し、時速約1100キロのスピードで自転している。だからこそ一年のサイクルが滞りなく繰り返されているのだが、これを「当たり前」のことと思ってはいけない。いったい、だれがこの精緻な秩序を創り上げたのか知る由もないが、どう考えても宇宙は生き物だという仮説にたどり着いてしまう。まさに「天行健やかなり」である。

 いったいいつ頃、植物がこの地球上に姿を現したのかわからないが、少なくともわれわれ人間よりずっと先輩だろう。しかも、地球上の生命のうち、植物だけが宇宙の細胞ともいえる地球と直接つながっている。われわれ人間も含め、他の生き物は植物から生かされている。大気の環境や食物連鎖を見ても、そのことは明白だ。

 さらに!、声を大にして言いたいのだが、植物の美しさは比類がない。一流のデザイナーが束になってかかっても、花の美しさに勝ることは不可能だ。『Japanist』の推薦人になっていただいている建築家の隈研吾氏も、「花の美しさに比べれば、人間の造った建築物などなにほどのものでもない」というような意味のことを話しているが、まさに慧眼と言うべきだろう。

 ということで、私は植物を尊敬しているのである。

 

 次号の『Japanist』の美術散歩は、植物の形をリアルに彫る須田悦弘氏であることは以前書いた通りだが、その撮影の後、写真家の森日出夫さんとアシスタントの藤間久子さんと食事をともにし、植物談義になった。

 そのとき、森さんが、「藤間の写真は、なんか、いいんですよ。言葉にはできないんだけど、なんか、いいんですよ」と言った。

 私は藤間さんに、どんな写真を撮っているんですか、と訊いた。

 彼女は、花の写真を撮っているんですと答えた。

 そんな経緯があって写真を何枚か送っていただいたのだが、私は一瞬にして気に入ってしまい、さっそく『Japanist』で連載を始めることにした。

 それが「花のきもち」である。

 その名の通り、藤間さんが撮る写真には、花のきもちが込められている。絵葉書のような写真だと、花のピークの頃ばかり狙うが、だからこそつまらないものがほとんどだ。生き物の息吹が感じられない。

 ところが、藤間さんの写真はちがう。

 「そうかぁ。こういう風に撮ればいいんだな」

 そう得心がいき、私もそういう撮り方にトライし始めたところである。これがまた、おもしろいのなんの。

 世の中は師匠ばかりだということが、あらためてわかった。

(131010 第458回 写真は、藤間久子さん撮影の椿。花びらが萎れ始め、明らかにピークを過ぎているが、脈拍や呼吸まで伝わってきそう)

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Profile

髙久多美男

髙久多美男

(撮影:森 日出夫)

●1959年生まれ

●1987年、広告の企画・制作を営む株式会社コンパス・ポイントを設立

●2009年、『Japanist』を編集・発行するジャパニスト株式会社を設立(2019年1月、刊行終了)

●「遊び、学び、仕事は皆同じ」がモットー。すべからく本質を求める

■本は永遠の師匠

19世紀フランス文学から20世紀アメリカ文学、さらには現代日本文学。歴史(特に日本近代史)、あらゆる生活・芸術分野から政治・経済の分野まで、本には強いな愛着を示す

■No Music, No Life

あらゆるクラシック音楽と1950年代以降のジャズ、R&B、60年代以降のロック、ワールドミュージックなど、とにかく雑食

■生涯、美を求めたい

桃山から江戸にかけての日本美術、岡倉天心一派以降の近代絵画を特に好む。ヨーロッパの近代絵画など、こちらも雑食

■敬愛する歴史上の人物

尊敬する人物は大久保利通。ほかに幕末から明治にかけて活躍した男たち。戦国武将では武田信玄、戦後の政治家では岸信介

■思索の遊び

禅、儒学、老荘思想、マキャヴェリズムを組み合わせながら、独自の思想を構築中

■いやなもの

共産主義や日教組などの極端な左翼思想(極端な右翼も嫌い)、地球市民幻想、新興宗教

■その他

日常的に走る他、毎年夏、山に登る。体型はずっと変わらず。便利なことよりも美しさに価値を見いだす

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