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紺碧の将

色がこれほど美しいとは

2025.07.05

 NHKの「日曜美術館」で造形作家・岡﨑乾二郎氏のことを知った。岡崎さんは4年前、脳梗塞で倒れ、半身不随となった。しかし、懸命のリハビリによってほぼ回復し、いまでは自在に筆を操っている。その楽しげな制作風景を見て、本物の作品を見たいと思った。

 願いは叶った。東京都現代美術館で大規模な個展「而今而後」が開催されている。

 広大な展示空間が岡崎作品で埋め尽くされている。1階は病気前の作品、中2階は病気を発症した直後の様子を記録したもので、なんと脳のMRI画像まで展示されている(きとんと血の塊が写っている)。さらには子供の絵のような闘病中のドローイングもある。絵を見るだけで回復の過程がわかる。ここで驚くことは、絵を描く技術が戻っても、純粋な絵心が失われていないこと。根っからの絵描き少年なのだろう。

 そのことは3階の作品群を見ればわかる。病気を発症した後の作品が並んでいるが、色ってこんなに躍動的で美しかったのか! とあらためて思い知らされた。アクリス絵の具を重ねても混ぜても濁っていない。最小限の筆の動きで一気呵成に描いているのだろう。入念な設計のもとなのか感覚だけに頼った即興なのかはわからない。わかるのは、色の調和がただただ美しいということ。厚く盛られた絵の具を斜めから見れば、岡﨑乾二郎は造形作家だということがよくわかる。

 さらに驚くのは、彼の表現形態がドローイングだけではないということ。人工大理石や寄木、布のパッチワーク、映像などを駆使し、アプローチは自由奔放。今年、これを超えるものには出会えないかも、と思わせるほど大胆不敵な企画展である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(250705 第1278回)

 

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