神は細部に宿る
今回は工芸家について。
JR王子駅南口に隣接した飛鳥山公園がおもしろい。渋沢史料館を目当てに行ったのだが、歴史好きもアート好きも家族連れも楽しめる。
渋沢史料館は次回に回すとして、北区飛鳥山博物館のアートギャラリーで人間国宝・奥山峰石氏の作品展について書こう。
奥山氏は鍛金師である。一枚の鋼板を叩いて鍛えて自在に形をつくり、意匠の形に切り抜いた鋼をその上に接合する。奥山さんの人となりや制作風景を映像で映していたが、興味深いものだった。
古来、日本人は職人気質の偉人を数多く輩出してきた。それも壮大なものではなく、小さきものを丹精込めてつくる。同じ〝物づくり〟でも、インドでエローラ石窟群やアジャンター石窟群を見たときは、あまりにもスケールが大きく、目がくらんだ。日本にも大仏など大きな鋳造物などがあるが、やはり日本人の心性に合っているのは小さなものだろう。
奥山氏が語っていた、ある言葉が印象的だった。
一代一職。
生涯を賭けて、ただただひたすらひとつの技を究める。
そんな生き方ができる人は幸せだろう。事実、映像のなかの奥山さんはとてもいい表情をしていた。
前回紹介した三輪龍氣生氏のように破天荒な作風もいいが、細部に神が宿っているような工芸品も素敵だ。
奥山氏の作品。『接合せ菖蒲文花器』
奥山氏近影
奥山氏の書「美」
同じく「一代一職」
北区飛鳥山博物館。デザインがユニーク
(241027 第1243回)
髙久多樂の新刊『紺碧の将』発売中
https://www.compass-point.jp/book/konpeki.html
本サイトの髙久の連載記事