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四十過ぎたら顔が名刺

2025.08.03

「四十過ぎたら顔が名刺」と言われるが、なるほどと納得できる。〝ルフィ〟ら大規模な特殊詐欺事件の首謀者たちは揃いも揃って極悪人の顔をしていた。生まれついたときに持っていたであろう善良な部分がみごとに落魄し、下劣で残忍な人間性がそのまま顔に表れていた。

 顔には善も現れる。フランス、イギリス(条件付き)に次いでパレスチナを国家承認すると発表したカナダのカーニー首相の顔には、いかにも篤実な精神性が表れている。前任のトルドー首相も清廉な印象だったが、カーニー氏はさらに落ち着きがあり、見るからにジェントルマンである。ガザの惨状を見過ごしにはできなかったのだろう。

 いま、カナダがパレスチナを国家承認しても得することはない。せいぜいアラブ諸国からの受けが良くなるくらいか。それに対して損失は大きい。アメリカのトランプ大統領を怒らせた結果、アメリカがカナダに課す関税は35%。それを覚悟したうえでの国家承認だから称賛に値する。

 一方、トランプ氏にも人格が如実に顔に表れている。金と自分のことしか考えていなければこういう顔になります、というサンプルになっている。日本との関税交渉が決着した後、「見たこともない金が入ってくる」と嘯いた。金に卑しいという自覚がないのだろう。

 もともと誇大妄想・被害妄想がひどい人だが、最近は拍車がかかっている。アメリカ労働省の雇用統計が「私を貶めようとしてインチキの数字を発表した」と言って局長をクビにすると言った。晩年の秀吉と同じだ。こうなって欲しいという数字とかけ離れていれば、すべて「インチキ」として処断する。恐怖政治である。利下げをしないFRBのパウエル議長も批判の対象だが、これも重大な越権行為。極めつけは、ブラジルが前ボルソナ大統領を訴追したと言って関税を50%に引き上げた。ボルソナ氏は重大な人権侵害を犯しており、訴追されるのは当然だが、〝同じ穴のムジナ〟であるトランプ氏にとっては気に食わないのだろう。内政干渉もはなはだしい。今後の世界情勢が思いやられる。

 トランプ氏は「アメリカ・ファースト」と言っているが、実は「自分ファースト」でしかない。先の参院選ではそういう人物に共感する参政党が大きく票を伸ばした。外国人政策以外は共感できる政策が多いだけに、返す返すも残念である。

 日本に限らず、自分たちに自信がなくなると、必ず矛先を外国人に向ける。ルールを守らない外国人に対して厳しく対処すべきなのは言うまでもないが(日本人に対しても同じ)、大半はまじめに働いてこの国に同化しようとしている。そういう人たちを排斥する国であってはならない。

(250803 第1282回)

 

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