文学フリマ東京40
東京ビッグサイトで開催された「文学フリマ東京40」というイベントに行ってきた。「フリマ」という言葉から、以前に開催された「東京ブックフェア」とは違うのだろうなと思っていたが、ここまでとは!
もとはといえば、昨年『紺碧の将』を刊行したことで日本歴史時代小説作家協会なるものに入会し、その流れで案内された。幕張メッセには行ったことがあるが、東京ビッグサイトは初めてである。
りんかい線の国際展示場駅で降りるや、異様な光景が目の前にあった。すべてが無機質。目に映るあらゆるものが人工物で、心なしか歩いている人も無機質な人造人間に思えてくる。ふだん、目にしない光景だ。
駅前をまっすぐ前に歩いていくと、いくつかの無機質な巨大建造物がある。それが東京ビッグサイト。いやはや、とことん無機質である。
1000円の入場料を払い、会場に入るやビックリ! 広い展示会場に2750ものブースがひしめいているのだ。熱気がムンムンと伝わってくる。元はとらねばと、すべてのブースを見ようと思ったが、途中で疲れ果ててしまった。本、本、本の洪水なのだ。しかも、ネットコミュニティの延長のような本が所狭しと並んでいる。めまいがしてきた。おそらく何万冊と目にしたと思うが、興味をひかれる本は皆無に近い。急に自分が本嫌いの人間になったような錯覚に陥った。
それにしても、本を出したい人があんなにいようとは! 自分も本を書いている身で言うのもなんだが、本が売れない時代、あれほど多くの人が本に執着している光景を見て食傷気味になってしまった。
ひとつ良かったのは、あのような光景を目にしたことで、自分の立ち位置を再認識できたこと。世の中の潮流がどうあろうと、自分の役割、そして自分が好きな本の世界を見直すことができた。
めでたし、めでたし。
(250512 第1271回)
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