ふつうの国になれる好機
およそこの世に生まれてきて、誇大妄想・被疑妄想の人に振り回されるのは絶対に避けたいと思うものだ。
トランプ大統領の言動を見てつくづく思うのは、衆愚政治もいよいよ極まったということ。彼のような人が民主主義国家のリーダーになったということ自体がいまだに信じられないし、日本でも約25%がトランプを支持しているという。SNSによって洗脳された人たちだろう。
トランプ氏が就任して以来、よくもここまで恥知らずなことができると思うほど、言うことが二転三転している。彼の発言は羽毛のように軽く、1ヶ月後どころか明日どう変わるかもわからない。どうやら前言を撤回することにまったく痛痒を感じないようだ。
私は今般のトランプ関税は、壮大な社会実験だと思って推移を注視している。あれほど人をこきおろし、目先の利益に固執する行動が、その後、どのような末路をたどるのか、興味しんしんだ。
アメリカは、他国に先駆けて日本との交渉を急いでいる。日本はなんでも言うことを聞くから、まずは成果をあげてそれを誇示し、そのほかの国々とのディールに臨みたいという魂胆だろう。たしかに日本にとって、アメリカの高関税政策は痛手だが、足元を見透かされて早期に妥結するのは避けてもらいたい。各国との交渉が滞れば打撃を被るのはアメリカも同じなのだから。
幸い、中国が貿易戦争に「とことんつきあう」と宣言している。やはりメンツにこだわる国だ。願わくば、アメリカと中国がとことんやり合って、両国とも体力を消耗してほしいものだ。
アメリカは日本の同盟国だが、かつて日の丸半導体をつぶした張本人でもあることを忘れてはならない。
日本はそろそろバランス外交に舵を切るべきだ。もちろん、そうした暁には自分の国を自分で守るという安全保障政策の大転換を余儀なくされるのは当然のこと。
ふつうの国になれる好機である。
(250504 第1270回)
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