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外の世界が自分に拍手をしてくれなくても、自分という一人のスペースの中で何かをなせばいい

カズオ・イシグロ

 2017年、ノーベル文学賞をこの人が手にした時は胸躍った。日本生まれで英国籍の作家、カズオ・イシグロ氏である。『日の名残り』などの作品から漂う、物静かで上品な人柄を思わせるイシグロさん。彼が黒澤映画の『生きる』のリメイクの脚本を手掛けたと知って、ふたたび胸躍った。彼の作品に流れる「生への問いかけ」が、英国版でどのように描かれるのか、期待が膨らむ。

 

 黒澤明監督作『生きる』のリメイク版を手がけるにあたり、某新聞でイシグロさんが語っていた言葉が印象的だった。

 イシグロさんは、この映画を11歳のときに渡英先で観たという。異国の地での生きづらさを感じていたのだろう。「生」の壁にぶつかった11歳の少年は、早くも「生きることの意味」を問うていた。

 

 そんな彼に、一条の光が差し込んだ。

 仕事にやりがいを感じられず、退屈な事務作業に追われていた役所の市民課に勤める堅物の男が、あることをきっかけに、真剣に生き直していく姿が、少年の心をゆさぶったのだ。

 

「大きな衝撃を受けました。傑出しなくても制限はあっても、いろんなことを考えて自分の努力をすれば、100%生きることができる。

 外の世界が自分に拍手をしてくれなくても、自分という一人のスペースの中で何かをなせばいいんだと思ったんです」

 

 誰の「生」にも未知なる可能性が秘められている。

 しかしそれは、スーパーヒーローのようなものばかりではない。

 ともすると、誰の目にもとまらないほどの、ささやかな煌めきかもしれない。

 それでも、「生」には意味がある。

 

 自分という惑星では、自分が主人公だ。

 終演の幕が下りる時、「ブラボー!」とスタンディングオベーションで称賛を捧げたい。

 

「がんばって、よく生きたね」と。

 自分自身に。

 

神谷真理子(本コラム執筆者)公式サイト「ma」

 

●「美しい日本のことば」連載中

 今回は「花くらべ」を紹介。

 平安時代の宮廷で盛んだった和歌の歌合(うたあわせ)。その中の遊びのひとつに「花くらべ」がありました。「花合わせ」とも言い、居合わせた人たちが左右に分かれ、それぞれ持ち寄った桜の花を歌に詠んで競い合うのです。続きは……。

(230327 第835回)

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紺碧の将

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