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紺碧の将

ルーティン

2021.05.10

 生活がルーティン化するのは、いいことか悪いことか。ずっと、いいことだと思っていたが、そうとも言い切れないのではないかと思うこともあった。そのときどきの状況に応じて、日常の過ごし方なんか柔軟に変えてもいいのではないか。あまり自分の〝生活慣習〟を縛るのは本末転倒なのではないか、と。

 しかし、今なら断言できる。生活のルーティン化はいいことだ。日常のリズムを整えるところと臨機応変に変えてもいいところ、そのふたつの側面を柔軟にこなすことこそ、ほんとうの自由ではないか、と。芸術家やスポーツマン、政治家、実業家を問わず、独自の地歩を確立した人は、ほとんどといっていいほど生活をルーティン化している。

 メイソン・カリーという人が書いた『天才たちの日課』という本は、161人の偉人たちの生活習慣を紹介したものだが、これを読むと、大きなことをなし遂げた人の多くが、自分なりの生活習慣をもっていたことがわかる。彼らは規則正しい生活をしなさいと言われてそうしたのではない。どうすればいい仕事ができるのかを考えた末、たどり着いた答えがそれだったのだ。おおむね、朝早く起き、午前中は集中して仕事をし、午後はペースを落とすという人が多いようだ(夜型の人は、創作の持続力が短いようだ)。

 私の場合は、生活をルーティン化しようと思って取り組んだわけではない。自分が心地良いと感じることを続けているうち、自然にそうなってしまった。歯を磨くのと同じで、「気がついたらやっている」という感じに。

 朝はほぼぴったり6時半に目が覚める。目覚まし時計は不要だ。音楽をかけ(だいたいバロック)、黒糖生姜茶を飲みながら新聞を斜め読みし、7時から約30分、書斎で運動する。ストレッチの後、首周りと肩周りを丹念にほぐし、エキスパンダー150回(30回×5回)、腕立て伏せ70回、腹筋ローラー24回、ダンベルを用いてのスクワットなど140回、腹筋など、自分なりに開発した40数種類の運動をこなした時点で頭と体は戦闘モードに入っている。

 仕事は難易度の高い順から着手する。ひと仕事終えたら、コーヒータイム(右上写真)。いつものように手動のミルをカリカリと回して豆を挽き、深煎のコーヒーをいれる。自画自賛になるが、これが美味い! いつも自宅で飲んでいるコーヒーがベースになるため、外で飲んで美味しいと感じることは滅多にない。器は大倉陶園のカップがお気に入りだ。

 コーヒーを飲みながら、禅語を20ほど書く。8年以上続けている習慣だが、今では453語の禅語を覚えている。その後、良寛の歌を書き写し、最後に白川静の『常用字解』を2ページずつ書き写す。この辞書は、漢字ひとつひとつの成り立ちや意味など、じつにていねいに書かれているから、読み物としても最適だ。今は朝の日課から外れたが、昼間のどこかで芭蕉の区を100句朗詠する。

 夜は9時ちょっと前にリビングに入り、音楽を聴きながらストレートでウイスキーをちびりちびりやり、本を読む。この時間の音楽はジャズかクラシック。いい音楽に包まれ、極上の酒を飲みながら好きな本(この時間はすべて小説)を味わう。一日をクールダウンさせるこの時間がなんとも心地良い。

 10時になったら速攻で寝る。その時間、眠気はほとんど感じないが、お決まりの時間だからだ。ベッドに入るや、だいたい2、3分で眠りに入る。そのまま朝まで爆睡するのが週の半分、朝方うつらうつらするのが3回くらい、夜中目が覚めて1時間ほど考えごとをするのが1回ていど。おおむね、睡眠の質はいいといえるだろう。

 昼間の時間の使い方は2パターンくらいあるが、だいたい大筋にのっとっている。週末もゴールデンウイークも年末年始も関係なし。ずっと同じパターンで生活している。仕事の能率が格段に上がるからだ。変わるのは旅行と出張のときだけ。たぶん、死ぬまでこういう日常を繰り返すのだろう。

(210510 第1075回)

 

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