メンターとしての中国古典
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禅ねこうーにゃんのちょっとした助言

宇宙は我が心に外ならず

2021.02.28

「宇宙は我が心に外ならず」

 

宇は是れ対待(たいたい)の易にして、宙は是れ流行の易なり。

宇宙は我が心に外ならず。

 

 これは佐藤一斎の『言志四録(後録)』の一節で、「宇とは無限の空間的広さを意味し、万物が互いに交わりあって変化している。宙とは悠久な時間の長さを意味し、万物が絶えず流行し変化し続けている。このような無限の宇宙は我が心にあって、我心以外のものではない」、こんな意味になります。

 

心に宇宙を描く

 

 私はこの一斎の言葉を「空間的な広がりと変化、時間的な流れと変化を頭に入れて、自分の中にしっかりとした世界を築かなければならない。未来を明るくするか暗くするかは我々の心次第」と理解します。

 宇宙というと一般的には天文学のような科学的な観点から捉えますが、この宇宙は自分の心にある無限の広がりである。人はそれぞれが独自の世界観を持っているという哲学的な視点がここにはあります。また、宇宙(地球の外側)から現代社会や自分を俯瞰する。過去や未来から、現在社会や自分を捉えてみる。つまり大局観の養い方を教えてくれているのです。

 佐藤一斎は四書五経に精通した幕末における超一流の教養人ですから、中国古典が説くところの世界観が端的に表現されていると思います。中国古典といえば儒教的な礼儀や規律、序列を重視する思想だと思いがちですが、明らかに誤解だと気づかされます。

 

不易流行

 

 易とは変化ということです。一年は春夏秋冬という四季を繰り返しながらも、同じ日はないし、同じ一年もない。つまり、原則は変わらないものの、常に変化している。これを不易流行と言います。

 不易流行は俳聖・松尾芭蕉が「奥の細道」の旅の中で見出した蕉風俳諧の理念の一つでもあります。芭蕉の俳論をまとめた書物『去来抄』では、「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」。この意味は、「永遠に変わらないこと(もの)を忘れず、新しみや変化も同様に取り入れて行くこと」または「新しみや変化を取り入れていくことこそが、実際は永遠に変わらないことでもある」となります。何百年も続く老舗の経営者に事業継続の秘訣を問うと、「理念や伝統は守るが、常に新しいことに挑戦すること」と答えが返ってきます。不易流行という考え方はビジネスにも通ずる普遍的真理です。

 永田町や霞ヶ関のスキャンダルが日々巷を騒がせていますが、時代は変われども政権が変われども、このネタが尽きることはありません。正しく「歴史は繰り返す」です。しかし、これは進歩がないので不易流行とは言えないでしょう。

 

世界はつながっている

 

 この度の新型コロナ・ウイルスの感染は、中国武漢からスタートし全世界に一気に広がりました。これもグローバル化の影響といえるでしょう。ウイルス感染対策として各国は渡航を制限し人の移動は止まりましたが、主要国は金融を緩和し実態経済とは遊離した形で世界同時進行の株高をもたらしています。そして富める者と貧しい者との格差もどんどん拡大しています。

 新型ウイルス発生の原因については、自然と人間の生活圏が入り乱れ、有害なウイルスが人間社会に侵入してきたと考えられています。ウイルスの広がり以外にも、石炭や石油など化石エネルギーを大量に使用することによるCO2の大量排出、オゾン層の破壊、温暖化による気候変動、大雨による甚大災害の頻発、北極や南極圏の氷河が溶けて海面水位が上昇。今後さらなる温暖化によって溶けた氷河の中から有害物質や生物が世界中に広がり、人類がさらなる危機に晒される可能性が高いと言われています。これらの現象を見ると本当に世界はつながっていることがよくわかります。

 産業革命以降、我々の生活を豊かにしてくれた科学技術や資本主義が原因となって、自然が破壊され人間に牙を剥いています。この問題を科学技術や資本(お金)の論理で解決できるのでしょうか。きっとその答えは価値観やライフスタイルの転換、つまり我々人間の心の中にあると思います。

 

日本人の持ち味を活かす

 

 現在、ビジネスにおいてはGAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)と言われるアメリカのITベンチャー企業が世界を席巻しています。他にもテスラなど有望株が続いており、資本主義の寵児が次々と誕生しています。一方、日本企業の地位はどんどん低下しています。島国根性が抜けきらず安定志向で保守的な日本人は世界レベルでの標準を作るのは苦手です。

 しかし、スケールで勝負するビジネスではアメリカや中国など大陸系の企業には勝てないものの、電子部品では世界をリードしているように、技術を凝縮させ小型化していく領域では日本企業に卓越性があります。元々日本には侘び寂びを楽しむ気風や文化がり、派手に大きく広げるより地味で狭い空間に広大な宇宙を描くことの方が得意なのでしょう。つまり、日本人は心の中に新しい世界を描く創造力の高い民族と言えるのではないでしょうか。

 物質的経済的な豊かさを追求することの限界が見えてきた今だからこそ、日本人の持ち味が活かせるチャンスが来たと言えるでしょう。

 

心の縮みを伸ばす

 

 しかし、我々の日常はというと、コロナ禍や政治のゴタゴタなど閉塞感が漂っています。目先のことに一喜一憂し、対症療法に心を奪われ窮屈な日々を過ごしています。そもそもマスコミが取り上げるニュースの大半は、パンデミックや不景気、事故、災害などネガティブなネタです。これではどんどん心が縮み、思考や行動が益々消極的になります。

ただ、閉塞感は環境や他人の問題ではなく、自分自身の心の問題です。手のひらに宇宙を載せるか、世間の中に自分を閉じ込めるか。こんな時こそ、世界はつながっている、変化はチャンスと考え、明るい未来を自分の心に描く。大きな宇宙を自分の掌で転がしてみる必要がありそうです。

 佐藤一斎なら今の時代にどんな宇宙を描くのか、聞いて見たいものです。

 

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