メンターとしての中国古典
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美し人
ココロバエ

道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず

2020.07.16

 この言葉は老子の一節で、世の中の創造論を展開しています。

 

 道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず。万物は陰を負いて陽を抱き、沖気(ちゅうき)以(も)って和を為す。

 

 現代語に訳すると、「無という『道』が有という一(元の気)を生み出し、一が天地という二つのものを生み出し、二つ陰陽の気が加わって三を生み出し、三つのものが万物を生み出す。万物は陰の気を背負い、陽の気を胸に抱いて、陰陽を交流させる沖気によって調和している」となります。

 

人類はどこから生まれた?

 

 人類は400万年前に現われたアウストラロピテクスとよばれる猿人が始まりと言われています。160万~150万年前にホモ・ハビリス(器用なヒト)が、30万~20万年前にはホモ・サピエンス(知性あるヒト)が登場し、厳しい氷河期の中でも効率よく食料を獲得し生き延び、現代人へと進化してきました。人類はじめ地球上の生命を生み出したのは、太陽のエネルギーであり、地球という大地であり、空気と水も必要不可欠なものです。ではそもそも地球はどのように誕生したか、宇宙はどうやって生まれたか。それは謎に包まれています。

 

道とは創造主

 

 宇宙のルーツはわかりませんが、目に見えない想像もできないような大きな力が働いていることはわかります。それを現代科学で解明していると思いますが、2000年以上前に老子は「道」という概念を提唱したのです。そとても創造的な偉業だと思います。老荘思想(老子+荘子)の根元になる「道」は、人類も存在せず言葉もなかった頃から存在するのだから、それは名もなきものであり、言葉でも説明できるものではないと言っています。 

 では「道」とはどんな存在か。それは母に例えることができます。人や動物は母親のお腹の中から生まれて来ます。自分のお乳で赤ちゃんを育て、包容力が高く子供のすべてを受け入れ、成長を見守る温かい存在であるといえます。

 また、「道」とは山のように目立つ存在でなく、谷のような隠れた存在である。雨水と大地の養分を山から川へそして海へと導き、地上の営みを支えている。低いところを嫌がらず、世の中に大きな貢献をしながら、自慢せず誇ることもない。そんな「道」のありようを人のありようのモデルとして捉えています。これが老子の説くところの「道徳」です。(ちなみに書物としての「老子」の正式名称は「道徳経」です。)

 

創造性の原理

 

 世の中のものは陰と陽から生まれます。代表は人間の生命でしょう。命は女性と男性が交わることで生まれます。動物も植物も同じ原理です。染色体はX(陽)とY(陰)の組み合えで性別が決まり、遺伝子の無限の組み合わせで、世界で唯一の性質を持った新しい命が生まれてきます。

 創造とは「今までになかった新しい組み合わせ」をいいます。組み合わせる2つのものの距離が離れている、つまり誰も思いつなかったアイデアの創造性が高いと言えます。誰も思いつかないということは、そのアイデアを聞いても最初は理解できない。ありえない、受け入れがたくて抵抗されるものだといえます。

 例えば、自動車が大きく変わろうとしています。エンジンとガソリンで動く車からモーターと蓄電池で動く電気自動車への転換です。自動車もモーターも蓄電池も昔からあったものですが、性能が飛躍的に向上したことで実現しました。もともと自動車と電機はまったく別の業界でした。電気自動車の雄であるベンチャー企業のテスラ(2003年設立)はエンジンを作ったことのない自動車メーカーで、株式の時価総額がトヨタ(1937年設立)を追い抜いたのは、時代の変化の象徴と感じます。

 

空っぽになる

 

 沖(沖)とは、海や湖で岸から見える範囲ではあるが遠く離れた場所、穏やかで偏らない、中身がない、空っぽ、虚しいといった意味があります。

 異質なものを組み合わせをするには、一つの空間に複数の異質なものを取り込まないといけません。仮に器や頭の中が一杯だと新しいものが入ってきません。そうすれば新しい創造的なものを生み出す状況にならないということです。コンピュータに例えるとCPUの処理速度がいくら速くてもハードデイスクの記憶容量がいくら大きくても、計算処理エリアであるメモリの容量が小さいとアウトプットの量が制限されます。

 仮に自分の容量(器)が限られているならば、頭の中の情報を捨てたり、どうでも良いことをやめて、気持ちや時間に余裕を持たせることが大切です。目の前のことで余裕がない状態が続くと、正しい判断ができないばかりでなく、価値あるものを生み出すという行為ができなくなります。「忙しい」「時間がない」といった言葉が口癖となると、人生の質を悪くすることになりかねません。要注意です。遊びを持ちましょう!

 

本当のポジティブ・シンキング

 

 ポジティブ・シンキングが大切であると言われますが、間違った解釈がまかり通っています。つまり、暗いことマイナスのことには目を向けず、明るいことプラスのことのみに目を向けなさいというのです。しかし、世の中のものは陰と陽で成り立っています。山は陽、谷は陰。太陽は陽、月は陰。昼は陽、夜は陰。夏は陽、冬は陰。晴れは陽、雨は陰。活動は陽、休息は陰。好調は陽、不調は陰。成果は陽、種まきは陰、などです。毎日晴れだとどうなるでしょうか。干ばつになり、食料危機になります。もちろん、豪雨になると水害が起こります。

 日本人の主食である米は、秋に収穫されます。秋の収穫後の冬場は土地を休ませます。春に種を撒いて夏に急成長し、収穫に至ります。年中収穫することはできません。つまり、休息があって種まきがあって成長があって、初めて収穫が生まれるのです。休息期はただじっとしています。田植えは泥に塗れます。成長期は酷暑の中で肥料や水のきめ細かなコントロールが収穫を増やすことになります。

 成果主義はいいけれど、休息で英気を養ったり、試行錯誤を繰り返し失敗から学ぶ「陰」があって初めて、成果という「陽」が手に入るということです。

 本当のポジティブ・シンキングとは、陰の大切さを知り、陰の持つ大きなエネルギーを活かして陽(良い結果)を生み出していく知恵なのではないでしょうか。

 

 

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Profile

三村 邦久

三村 邦久

1961年、兵庫県生まれ。

株式会社アイパートナー代表。中小企業診断士。著書に『「愚直経営」で勝つ!』(PHP研究所)、『豊かな働き方 貧しい働き方 自分と組織のマネジメント論』『うーにゃん先生の持ち味コーチング』(いずれもフーガブックス)。

株式会社アイパートナーHP

http://www.i-partner.co.jp

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