メンターとしての中国古典
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吾日に吾が身を三省す

2019.12.06

 これは論語の一節で、毎日次の3つのことを振り返えろうという教えです。

 

 その3つとは、

「人の為に謀りて忠ならざるか、

 朋友と交わりて信ならざるか、

 習わざるを伝えしかと」

 その意味は、

1)人のために思いをめぐらせて真心を尽くさなかったのではないか

2)友人と交際して誠実でなかったのではないか

3)習得していないことを人に教えたのではないか

という問いです。

朝昼晩、日に3度反省するということではないようです。それも悪くないと思いますが。(笑)

この3つは、人間性(徳)を高める視点を述べているのだと思います。一つずつ考察してみましょう。

 

1)相手の立場に立つ

 

 真心とは、人への思いやり、弱者を慈しむ心。相手の立場に立って、人の痛みを理解し共に感じるということで、「仁」(惻隠の心)と同義語と考えていいでしょう。利他の精神であり人への貢献こそがその人の価値を示すものとも言えます。

 そこには「義」が必要です。「義を見てせざるは勇無きなり」と言われるように、人のために行動を起こすには、一歩踏み出す勇気が必要です。なぜならそこには躊躇や自己犠牲が伴いますから。

 真心の極致の話として思い出すことがあります。かつてJR山手線新大久保駅で泥酔した男性がプラットホームから線路に転落し、その男性を救助しようとして線路に飛び降りた日本人のカメラマンと韓国人留学生が、進入してきた電車にはねられ、3人とも死亡したという傷ましい事件がありました。

 これは極端な話としても、母親が家族のために真心を込めて料理を作る。農家の人が真心を込めて米や野菜を育てる。蕎麦屋の親父さんが真心を込めて蕎麦を打つ。効率や損得では計れない人の心であり、本当の人間としての価値を問うているのではないでしょうか。

 しかし現実は人は自分が可愛く、自分の利益を優先しがちです。口では「人のため、国民のため」と言いながら、腹の中では何を考えているのかわからない。これは偽善ではないか、と思ってしまうことは少なくありません。

 

2)リスペクトある友人関係

 

 一口に友といってもさまざまな友がいます。机を並べて学んだ学友、志を同じくする朋友、悩みを相談し助け合う親友、共に戦った戦友。友と言うからには、安心して互いに心を開く、つまり信頼し認め合う関係がなくてはなりません。

では、信頼関係はどうやればできるのか。一言でいうと誠実ということになるでしょう。誠実という字を分解して考えてみると、「誠」という字は言うを成すと書きます。つまり言行一致、嘘がないということです。「実」は中身が詰まってどっしりと重さがあります。外見だけで中身がない、吹けば飛ぶような存在は信頼の対象になりません。

 本当の友達というものを考えると、平昌冬季五輪スピードスケート女子500メートルのシーンを思い出します。レース後、金メダルを獲得し日の丸を肩にまとった小平奈緒選手が、五輪3連覇を目指していた韓国の李相花(イ・サンファ)選手を抱きしめるシーンをみて、私は目頭が熱くなりました。その時に二人が氷上で交わした会話は、「チャレッソ」(よくやったね)と小平選手が李選手をがねぎらい、小平奈緒「あなたを尊敬します」・・・李相花「あなたも立派です」と互いに声を掛け合ったそうです。小平選手と李選手は長年のライバルであり、親友でもあるそうです。ライバル(rival)という言葉の由来は、川(river)にあるそうです。つまりその間に勝敗があっても、同じ目標に向かう認め合う仲間であるということです。

 

3) 教えることは学ぶこと

 

 自分のマスターしていないことを人に教えてはいけない。人に教えることを生業にしている私は、この言葉を聞くと穴があれば入りたいほどの気持ちになります。

 学校の勉強と違い、社会には唯一の正解というものがありません。ですから正解を教えることはできませんが、自分なりに最善と思う考え方ややり方を提示し、より良い選択ができるようサポートすることになります。

 自分なりに最善と思えるようになるためには、優れたものに学ぶ、良いと思うことを自分なりに実践してみる、そして教訓も含め自分なりの答えを持つようにしています。

 また、人前で自信を持って話すためには、プロフェッショナルになる必要があります。プロフェッショナルを日本語で言うと玄人(くろうと)で、暗く人が見えないところが見える人の意味です。プロフェッショナルとしての眼力を身につけるには、一つのことに約1万時間(毎日3時間で約10年)没頭することが求められます。つまり、本当のプロとは、専門技能に優れているだけでなく、人間性にも秀でている必要があるのです。

 

3つの自己鍛錬方法

 

 毎日自分を振り返るということは、自分を人として成長させる鍛錬です。ここで、日本の伝統的な鍛錬の方法をご紹介しておきましょう。

 

1)「慎独」

「君子は必ずその其の独りを慎む也。小人は閑居にして不善を為す。」これは大学の一節で、「立派で徳のある人は、一人の時であっても心を正しく持って言動を慎む。一方、徳のない者は一人でいると良くないこと・不正を行う」という意味です。「徳のない人は、自分の悪い行いを隠して良いところを見せようと虚勢を張ります。しかし、他人からは心の奥底まで見抜かれてしまい、いくら自分の悪い行いを隠そうとしてもすべてわかってしまう。心の中が誠実であれば、それは必ず形となって外に現れる。よって徳のある人は、一人きりの時でも心を正しく持って良心に反することをしないように慎むのだ。」

 

2)「立腰」

立腰とは、腰骨をいつも立てて背筋を伸ばし胸を張る姿勢を作ることです。これには、以下の効果があります。

 ・気持ちがスッキリし、邪な心がなくなる

 ・姿勢が良くなり目線が上がり視野が広がる

 ・猫背による背中の張りが減り、疲労や肩こり腰痛が少なくなる

 ・内臓の圧迫が解放され、体内(丹田)からエネルギーが湧いてくる

 ・心身の状態が良くなり、何事にも前向きで積極的になれる

一方、猫背だと肺や内臓を圧迫し消化が悪くなり、肺を圧迫すれば空気が全身にいきわたりません。体はだるく脳に酸素がいかなくなり、ぼーっとしてしまいます。

 

3)「克己」

克己とはセルフコントロールのことです。つまり、理性(感情や本能に支配されず、道理に基づいて思考し判断する能力)、我慢(感情的な辛さや生理的欲求などを受け止めて耐えること)を指します。

例えば、小腹が空いて間食を食べたいが我慢する。欲しい物があるが、衝動買いせずもう1週間じっくり考えてみる。人に怒りを覚えても、深呼吸して気持ちを落ち着けるなどテーマは山ほどあります。

これはとても大切なことで、自分をコントロールできない人が、人を導いたりコントローすることなどできないからです。

 

振り返りの効用

 

 最後に、振り返りをすることの意外なメリットをお伝えしたいと思います。

 毎日振り返りを行い、欠点や問題を見つけて改めるという作業は、精神的な負担が少なくありません。そこで反省ではなく、単純に朝から寝る前までの一日を思い起こしてみることをお勧めします。

 今日は体調も悪く気持ちも萎えて、グダグダな日々であったと思うことがあります。しかし、その日の行動や出来事の一つひとつを思い起こしてみると、悪いなりに精一杯やった、過去に種蒔きしたことの芽が出始めた、周りの人に助けられた、など良いことが見つかります。つまり、単純な振り返りをすることで、自己肯定感や自己効力感、自己信頼感が高まります。

 

 明るく前向きに、自分を振り返る良い習慣を身につけてゆきたいものです。

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Profile

三村 邦久

三村 邦久

1961年、兵庫県生まれ。

株式会社アイパートナー代表。中小企業診断士。著書に『「愚直経営」で勝つ!』(PHP研究所)、『豊かな働き方 貧しい働き方 自分と組織のマネジメント論』『うーにゃん先生の持ち味コーチング』(いずれもフーガブックス)。

株式会社アイパートナーHP

http://www.i-partner.co.jp

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