メンターとしての中国古典
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為さざるなり、能わざるにあらざるなり

2019.11.11

 これは孟子の一節で、頭に一撃を食わされる言葉です。

その意味は、「できないのではない。やらないのである」ということです。もう少し解説すると、「王道、徳(国民や社員への思いやりや慈しみ)を基本としたマネジメント(政治)をするということは、身近な日常の中にあり、それはできることであり、できていないとすれば、やっていないだけだ」というのが孟子の主張です。現実的な問題としては、さまざまな利害の衝突や問題があり、思いやりや優しさだけでマネジメントができるわけではありません。ただ、思いやりの精神を基本に据え日々過ごすことは、できないわけではないだろうと思います。

(参考:「王道」に対し「覇道」は、徳ではなく権力や武力・財力で強制的に組織を支配し、覇権を拡大していこうという考え方で、国民や社員は覇権を拡大するための道具に過ぎないということになります。太平洋戦争時の国家のあり方は覇道の政治と言えるでしょう。)

 

我々はできない理由を考える天才か

 

 徳を積むこと以外のことにも私たちの日常には、「為さざるなり、能わざるにあらざるなり」(不為也、非不能也)が当てはまることが多々あります。仕事でも勉強でも思うようにできない時、できることを考え行動に移すより、できない理由を考え、自分を正当化することをしてしまいます。

 例えば、自分に対しては、実力がない、才能がない、経験がない、お金がない、時間がない、運がないなど。周囲に対しては、育った環境が悪い、上司の支援がない、仲間の協力がない、会社が悪い、景気が悪い、社会が悪い、政治が悪い、今の時代が悪い、などできないなど理由を挙げればきりがありません。

 

思考停止用語を禁ず!

 

 ではどうすれば良いのか。まず、思考と行動を支配する悪い言葉遣いを変えることから始めてみてはどうでしょうか。

 職場でよく使う5つの言葉を思考停止用語を位置付け、使わないようにしましょう。

①まず、「忙しい」。この文字は心を亡くすと書きます。これは病気です。この言葉を使うときには、自分がこんなに頑張っているのにうまくいかないのは誰々のせいに違いない。そんな被害者意識と自己防衛意識が働いていると思います。

②次は「無理」。何でもできるとは言いません。運動神経の良くない58歳の私が、今からオリンピックに出場することは不可能だと思います。しかし、できる可能性のあるものでも、前に立ちはだかる困難を想像して無理と決めつけます。無理を言い切ると楽になります。しかし、これでは前に進みません。

「時間がない」。忙しいと同様にこれもよく口にする言葉です。では一日に何時間あればいいのでしょうか。不公平や不平等の多いこの世の中で、唯一公平なのは誰でも一日は24時間ということです。余裕でたくさん稼いでいる人も、長時間労働でもあまり稼いでいない人も皆同じく一日24時間です。つまり時間がないのではなく、時間の使い方が悪いと考えるべきではないでしょうか。

「面倒臭い」。こう思うことは多々あります。職場での「報連相」などは典型ではないでしょうか。しかし、ここの手を抜くと仕事はうまくいきません。この言葉を繰り返していると、何でも面倒臭くなり、鈍な人間になってしまいます。マメさは物事を円滑に進める秘訣ですから。

「どうせ……」。どうせ私なんか……、どうせ誰も……などといったあきらめと被害者意識を含んだ言葉は、倒産する企業に共通する言葉だそうです。倒産も破産もしたくありませんので。

 

自己信頼感を高める

 

 さらに行動を起こすには自信が必要です。しかし、「自信が持てない」と悩んでいる人はたくさんいます。自信がないというのは心の問題です。どんなに特別な才能があったとしても、「自分はダメな人間だ」「自分には何もない」と思っていたら、せっかくの才能を発揮することはできません。自信というのは自己信頼感であり、どうすれば自分を信頼できるようになるかということを考えてみる必要があります。

 

①自分に嘘をつかない

まず、自分との約束を守ることです。約束を破る人のことを誰も信頼しません。他人は当然のこととして、自分に対してもです。自分は一番近い他人ですから。そこで、何か簡単でできそうなことから始め、それをやり切ることです。毎朝決まった時間に起きるとか、すぐに取り入れられて達成できそうな目標を立てて実行してみましょう。決めたことを確実に実行すること(自分に嘘をつかないこと)で、自分を信頼できるようになります。

②心技体を高める努力

一流のスポーツ選手は大会前に、「自分を信じて頑張ります!」という言葉を口にします。結果はやってみないとわかりません。しかし、目標を定め、しっかり練習をして心技体を磨いたという努力が自信を生むのです。

③持ち味を活かす   

好きで楽しくやる、結果を気にせず目の前のことに没頭することが良い結果をもたらす秘訣です。つまり、自分の得意や強み持ち味を、どのフィールドでどう活かすか。胸を張って力を発揮できる場所を見つけることが肝要です。それが見えれば、自他ともに認める胸を張ったプロフェッショナルになるでしょう。

④信念と使命感   

信念の「信」は何を信じるかということです。徳を基本としたマネジメントを行うことは、人として正しいこととであり、間違ったことはしていないという正当性が自信になります。

どういう価値観や考え方をもっているのかということで、それは社会性を帯びた使命感にもつながるでしょう。

⑤志と応援団

志や理想を掲げれば共感者が増え、同じような感性を持ち合わせた応援団が集まってきます。 論語にも、「朋あり遠方より来たる、また楽しからずや」とあるように、心が通い合った頼りになる仲間と何かをすることは楽しいばかりでなく、大きな自信にもつながります。

 

 以上、5つの方法を組み合わせるとちょっとやそっとでは揺るがない自信が持て、胸を張って堂々と行動に移せるでしょう。そして、周りの人からの信頼感も高まり、いろんなことが良い方向に回っていくのではないでしょうか。

Profile

三村 邦久

三村 邦久

1961年、兵庫県生まれ。

株式会社アイパートナー代表。中小企業診断士。著書に『「愚直経営」で勝つ!』(PHP研究所)、『豊かな働き方 貧しい働き方 自分と組織のマネジメント論』『うーにゃん先生の持ち味コーチング』(いずれもフーガブックス)。

株式会社アイパートナーHP

http://www.i-partner.co.jp

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