人は他人の欠点をすぐ非難するが、それを見て自分の欠点を直すことはめったにしない。
「人のふり見て我がふり直せ」という諺がある。人の悪行を反面教師にしろということだが、他国にも「Learn from other people’s mistakes.(他人の失敗から学べ)」という同じような諺があることを思えば、そう簡単にはいかないということだろう。言葉にすれば単純なのだが、単純なことほどむずかしい。
いつの世も誹謗中傷は絶えないが、SNSが普及したことによって近年とみに増えていると感じる。誹謗中傷の多くは、自分自身を顧みず、もっぱら他人を攻撃することに意識が向けられていると映る。
上掲の言葉は、ラ・ロシュフコーの『箴言集』にある言葉だが、今も昔も人間の本質は変わらないということだろう。
いやいやだと思っていた親の欠点が、大人になって自分にも思い当たることはよくあることだが、それも、自分を〝棚に上げた〟ことの結果といえよう。
目が外についている以上、視点が他人に向くのは仕方がない。だとしても、他人の目が自分に向いていることも忘れてはならない。それは、他人の目ばかり意識しろということではない。ただ、人を非難したくなったときは、自分にも同じところはないだろうかと、視点を内側に向けてみる。世阿弥の言った「目前心後」はそのような意味にも解釈できるのではないか。
性格は変わらなくても、意識を変えることはできる。それによって行いが変り、人生の質が変わっていく。つまり、人生が良くなるにせよ、悪くなるにせよ、ほとんど自分が決めているようなもの。だから他人のせいにしてはならない。そう考えれば、よほどのことがない限り、誹謗中傷という行為には至らないはずだ。
(260927 第905回)
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