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匿名化の進む社会は美しくない

藤原正彦

 今から19年ほど前、個人情報保護法が施行された頃、ある新聞のインタビューに答えて、数学者・藤原正彦氏が語った言葉。

 社会の様相について「美しいか、そうでないか」という基準で判断する人は稀である。例えば、匿名で他人を誹謗中傷できるX(旧ツイッター)が美しいかどうかといえば、きわめて美しくないといえる。卑怯者の巣窟であり、汚物溜めのようだ(見てはいないが)。

 藤原さんは、「個人だけを守って社会を壊す現象が起きている。社会は『点』の個人と『線』の人間関係でできているが、保護法は点を守り、線を切っている」とも述べている。

 点と線、どちらが強くなりすぎてもいけない。日本人はなんでも行き過ぎてしまうと警鐘を鳴らす。その言葉のとおり、現代社会は日本も世界もズタズタに寸断されているといっていい。もちろん、やむをない理由はある。個人情報を悪用する輩がいること。ITが発達することによって、その手の犯罪が激増した。便利になった反面、人間の悪の面を助長してしまったのだ。

 藤原さんはこうも語っている。

「六法全書の厚い国は、多くの法律がないと社会を動かせないということで、恥ずべきことだと思う。法律は網で、そこには必ず隙間ができる。人間というのは隙間を抜ければオーケーと考える。それを規制するためにまた法律ができる。しかし、道徳倫理は全体を覆うから隙間がない」

 法律ではなく、各々の道徳倫理をもって規範とする。たしかにそういう社会は美しいと思うが、ここまで個人の人権が肥大化した現代、そのような社会をつくるのは不可能だろう。

 では、どうすればいいのか。

 わからない。ガラガラポンにならない限り、根本的な変革はできないにちがいない。となれば……。

 思考は堂々巡りをする。

(251027 第886回)

 

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