メンターとしての中国古典
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弱の強に勝ち、柔の剛に勝つは、天下知らざる莫きも、能く行なう莫し

2020.04.15

 この一節は老子の言葉です。

その意味は、「弱いものが強いものに勝ち、柔よく剛を制すとは世によく知られたことだが、それを行うとなると難しい」と言うことです。

 

新型コロナウイルスとの戦い

 

 世界を震撼させている新型コロナウイルス、目には見えないほど小さく、人に寄生しないと生きていけない弱い存在です。しかし、人から人へと移り、地上最強の人類を恐怖に陥れています。このウイルスとの戦いは戦争に例えられるほどです。しかし、各国が防衛の名の下に躍起になって増強してきた武器は、新型コロナウイルスの前ではまったくの無力です。

 さて、このコロナウイルスに対処する方法はというと、

 ・手洗い、うがい

 ・三密(密閉・密集・密接)を避ける

 ・ソーシャルディスタンス(約2メートル)を空ける

 ・Stay Home、外出自粛、自宅で巣篭もり

 などです。つまり、どこにいるかわからないウイルスには近寄るな!

 時差出勤、在宅勤務・テレワークが奨励され、仕事は会社でという既成概念を捨て柔軟な対応が求めれられいます(これまで満員電車という苦痛で危険な行為を強いられてきたこと自体不思議ですが)。日頃奨励されているアクティブな行動を慎む。極めて消極的で弱々しい行動スタイルが、新型ウイルスに勝つ方法だと言うのです。

 

柔弱剛強

 

 老子は「上善は水の如し」と言うように水のありように理想を求めています。

(バックナンバーを参照ください。https://www.compass-point.jp/mentor/7205/ )

 冒頭の一節は前後に文章があり、政治や経営の世界にも話が及んでいます。

 

「天下に水より柔弱(じゅうじゃく)なるは莫(な)し。而(しか)も堅強(けんきょう)を攻むる者、これに能(よ)く勝る莫し。その以(も)ってこれを易(か)うるもの無きを以ってなり。弱の強に勝ち、柔の剛に勝つは、天下知らざる莫きも、能く行なう莫し」

 

 この意味は、「この世に水よりも柔らかく弱々しいものはないが、それでいて固く強いものを打ち破ることにおいて水に勝るものもない。その性質を変えることのできるものが存在しないからである。弱いものが強いものに勝ち、柔よく剛を制すとは世によく知られたことだが、それを行うとなると難しい」です。

 

高校生の力

 

 茨城新聞社の記事によると「コロナウイルスによる学校の休校に際して、茨城県では県立学校休校を巡って、日立一高生の有志約80人が県内全域の休校を求めるストライキを8~10日までの3日間実施した。感染拡大への不安に加え、教育機会の平等性確保の観点から全県立高の休校を要求。市長会など地方4団体は13日、連名で「一律休校を求める要望書」を教育長に提出した。ただ、「ストを続行した場合、引き際の見極めが容易ではないと判断し、生徒らの考えが広く伝わったことから13日朝、スト終結を決めた」とあります。

 投票権も持たない力の弱い高校生の有志が、仲間の命と権利を守るために政治を動かしたと言えるのでしょう。これは正しく、柔弱剛強と言えるのではないでしょうか。

 現在の日本において、香港などのような強硬なデモやストライキはみられません。問題と思ってもなかなか一歩踏み出せるものではありません。そんな社会の空気の中、受験勉強で大変な高校生がストライキを起こすことは、とても勇気のいることです。引き際を心得ているのも大したものです。将来そこから立派な政治家が生まれることを願ってやみません。

 

理想のリーダー像

 

 さらに、こんな文章が続きます。

「ここを以って聖人は云(い)う、国の垢を受く、これを社稷(しゃしょく)の主と謂(い)い、国の不祥(ふしょう)を受く、これを天下の王と謂うと。正言(せいげん)は反(はん)するが若(ごと)し」

 

 この意味は、

「そこで道を知った聖人は言うのだ、『国家の社会の汚れを甘んじてその身に受ける者、その人が国家の主である。国家の災いを甘んじてその身に受ける者、その人が天下の王である』と。本当に正しい言葉は普通とは逆のように聞こえるものだ」です。

 

 コロナウイルスの被害は国民の命と生活に甚大な被害を及ぼす危機であり、社会の汚れと言えるでしょう。それは自然災害や天災の類と言えるのでしょうが、対応の巧拙によって人災にも変わってしまいます。国や自治体、そして経営者などのリーダーシップの良し悪し、国民一人ひとりの自己中心的な行動によって非難が及ぶこともあるでしょう。特に、命や健康よりGDPや売上利益を優先したり、利害関係者の声により判断が歪められたり、責任を回避するような態度は国民や社員の信頼を損なうことになります。例えば、国が知事に権限を委譲し、「金は出すが口は出さない」、そして自ら責任を引き受ける態度をとるなら、政権の支持率もうなぎ登りとなるでしょう。しかし、「金は出さないが口は出す」、議論ばかりでスピード感や具体性に欠け、民意を軽視した自画自賛や自己弁護は、決して許されるものではありません。

 

創造的破壊

 

 老子は社会の既成概念を問いただします。つまり、これまで当たり前で疑いもしなかったこと、正しいと思っていたことを疑います。今回の危機は既存の構造を崩壊させ、カオス(混沌とした状況)を生もうとしています。しかしこの先には、小さく弱いかもしれないが、柔軟性に富む生命力の高い世界が待っているのではないでしょうか。

 例えば、三密(密閉・密集・密接)に代わる、オープンで分散し適度な距離をとるストレスの小さな働き方など新しい社会のスタイルが作られて行くのでしょう。政治における集権と分権化のバランス改善、各所における世代交代も望まれます。そして資本主義やグローバリズムのあり方も問い直されるでしょう。

 コロナ禍でお先真っ暗と思えるかもしれませんが、より良い未来を思い描きながらこの難局を乗り切って行きましょう!

 

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ココロバエ

Profile

三村 邦久

三村 邦久

1961年、兵庫県生まれ。

株式会社アイパートナー代表。中小企業診断士。著書に『「愚直経営」で勝つ!』(PHP研究所)、『豊かな働き方 貧しい働き方 自分と組織のマネジメント論』『うーにゃん先生の持ち味コーチング』(いずれもフーガブックス)。

株式会社アイパートナーHP

http://www.i-partner.co.jp

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