メンターとしての中国古典
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憤りを発して食を忘れ、楽しみて以て憂いを忘れ、老の将さに至らんとするを知らず

2020.02.04

 この言葉は論語の一節で、孔子が自らの人物像を表現したものです。

 その意味は、

 学問が好きで発憤して夢中になって食事も忘れ、その意を会得すると心から喜び楽しんで、心配事も忘れてしまう、そして老いがやって来ることにも気づかずにいる。

 ここでいう学問とは、知識の習得ではなく人や社会を良くする実践的な研究であり、幸せな働き方や生き方の理想の姿を表現したものだと考えます。

 この一節は、このコラムの第2号「これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず」(2019.4.9)に通ずるものです。https://www.compass-point.jp/mentor/6260/ 

 

発憤と感化

 

 では、憤りを発する(発憤)とはどういうことか。

 何かに刺激されて精神を奮い起こすことを言います。憤りと言っても、周囲の人や社会に怒りを覚えるというよりは、失敗したり負けて悔しい。立派な人と比べると自分の考え方や言動のレベルが低く、恥ずかしくて情けない。自分はまだまだだ。もっと頑張らねばという前向きな精神状態を指します。

 発憤は人の成長の起爆剤です。誰かの発憤は周囲の人に影響を与えます。つまり人を感化して、互いに切磋琢磨し成長して行くスパイラルの関係ができ上がります。これが理想の人間関係であり、強いチーム作りにもつながります。アフター5に飲み屋で会社のグチ、上司のグチを言い合っている生産性ゼロの関係とは対極の状態と言えるでしょう。

 

働き方改革の本質

 

 この一節は、我々にとっては働き方改革の指針となるものだと考えます。

 働き方改革は労働時間の短縮に焦点が当たることが多いのですが、日本の社会において大きな問題は働く人の意欲の低さで、ハングリーさの欠如、チャレンジ精神の低さは世界的に見ても顕著なようです。会社に行って目の前の仕事に忙殺され、働く喜びはあまりない。お金があれば会社を辞めたいと考えている人は少なくありません。

 ではどんな働き方が理想なのかということで、その答えがここにあるのではないでしょうか。無数にある職業の中で今の仕事に就いているのも何かの運命と考えれば、目の前の仕事を天職として意味を見出したいものです。

 日本には「武士道」「書道」「華道」「茶道」など「○○道」というものがあります。それは技を磨き続ける、人間としての成長や成熟に主眼をおいたものです。ですから目の前の仕事を営業道、経理道、経営道、技術道、接客道、品質道、掃除道など、その道を極めて行くことを目的とすることで、自分の世界を創造して行く楽しみが生まれます。

「○○道」は結果を追うばかりでなく、そのプロセスを大切にすることであり、周囲の移ろい易い評価や評判、浮き沈みに振り回されることもなく、心の平静をも手に入れられるでしょう。

 

リフレーミングで視点を変える

 

 自然界にいろんな風景があるように、働き方や生き方にもいろんな風景があります。世間体や評価、収入にフォーカスした生き方をするのか、まわりはどうであれ自分らしい生き方を貫くのか、どちらを選んでも自由です。いつも見ている風景でも額を掛け替えると、世界は一変します。絵の額を変えるように見る枠組みを変えることをリフレーミングと言いますが、仕事のどこにどんな額をかけるのかで働き方も変わります。

 また、我々は色々と心配事があります。しかし、過去は後悔しても変わらないし、未来は心配してもどうなるかわかりません。そこで大切なのは思い悩まず、自分がコントロールできることは直ぐに実行に移し、コントロールできないことはキッパリと諦めたり、考えることを止めることです。つまり、後悔や取り越し苦労、猜疑心は捨てて、今できることに集中し没頭することです。

 

 

好きから始まるプロフェッショナルへの道

 

 仕事の中に喜びを見出し、夢中になり没頭できることはとても幸せなことです。

 当然、仕事は楽しいことばかりではありません。しかし、苦労があってこそ、目標を達成した喜びや成長した実感が大きくなります。

 誰でも好きや得意でやっていることならそれに関して一生懸命勉強したり工夫したりと努力をするため、自ずと上達していきます。しかし、本人は努力をしているという自覚はなく、楽しいからやっている、好きだからもっとうまくなりたい、もっと知りたいという欲求にしたがって、ますますのめり込んでいきます。気がつけば、いつの間にかその道のプロフェッショナルになっているということではないでしょうか。

 

持ち味は戦略の核

 

 私は真のモチベーションとは、「自分の中に将来への可能性を見出すこと」と定義しています。つまり、持ち味で未来を切り拓くことです。ホンダの創業者である本田宗一郎さんは、「得手に帆をかけて」と言われました。自分が持っている個性・持ち味を仕事の基軸とすれば、胸を張って堂々と働けるようになります。それは最高のパフォーマンスを引き出すことになります。  

経営学の巨人ピーター・ドラッカーは、こんな言葉を残しています。

「誰でも自らの強みについてはよくわかっている。だが、たいていは間違っている。わかっているのはせいぜい弱みである。それさえ間違っていることが多い」 さらに、「自らの強みに集中すべきである。無能を並みの水準にするには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーと努力を必要とする」と。

 戦略の基本は企業でも個人でも、自分の強みにフォーカスすることです。自分の個性や持ち味を理解し、磨き上げ、自信を持って行動できるようになれば、おのずと結果はついてくるでしょう。自分を唯一無二の存在と認識し、他人と比較することなく、得意なやり方で目の前の仕事に没頭すれば、仕事が楽しく誇りが持て、働きがいにもつながるでしょう。

 

持ち味を活かす5つの質問

 

 研修などで「自分の持ち味はなんですか」という質問を投げかけると、「そんなこと考えたことない!」とキョトンとされるケースも少なくありません。多くの人は自分の欠点を直すことにばかり気を奪われて、自分の持ち味について考えたことがないのです。私が行う持ち味コーチングでは5つの質問を使います。  

1)仕事が楽しいと感じるのはどんなことですか  

2)自分の好きなこと、得意なことはなんですか  

3)過去に褒められたり、評価されたことはなんですか  

4)その持ち味を活かしてどんな貢献ができそうですか  

5)自分の持ち味(武器)どうやって磨いていきますか  

 これらの質問で、自分が気づいていない自分に気づくことから始めます。自己分析を行うとともに、自分の貢献可能領域(チャンス)を探していきます。同時に前向きで ポジティブな姿勢を作ることになり、自己肯定感を高める効果があります。この5つの質問は極めて戦略的でもあります。孫子の兵法で「彼を知り己を知れば百戦殆あやうからず」と言われるように、自己理解をしっかりと行うことが肝要です。

 

<参考>メルマガ「モチベーションマラソン」

私が10年以上毎週続けているメルマガがあります。その名は「モチベーションマラソン」で、テーマは、日常の中に何か楽しいことを見つけることであり、一週間を振り返り、楽しかったこと、嬉しかったこと、勉強になったことなどをピックアップし、中国古典と関係付けて発信しています。

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Profile

三村 邦久

三村 邦久

1961年、兵庫県生まれ。

株式会社アイパートナー代表。中小企業診断士。著書に『「愚直経営」で勝つ!』(PHP研究所)、『豊かな働き方 貧しい働き方 自分と組織のマネジメント論』『うーにゃん先生の持ち味コーチング』(いずれもフーガブックス)。

株式会社アイパートナーHP

http://www.i-partner.co.jp

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