日本人として覚えておきたい ちからのある言葉【格言・名言】

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孤独を学べ

伊集院静

 新社会人、新成人へエールを贈りつづける伊集院静氏の著書『贈る言葉』に度々でてくる言葉だ。悩むのは若者だけじゃない。老いも若きも、迷い、悩み、自分自身やゆく道を見失いそうになるときはあるものだ。ニンゲンだもの。愛のある励ましの言葉がほしくなるときもある。
 
 人生は、よく登山に例えられる。
 一歩一歩、頂きに登って行く工程が、目標に向かって歩んでゆく人生と重なり合うからだろう。
 目標に大小があるように、山にも富士山のように高い山もあれば、高尾山のような比較的登りやすい山もある。
 山ではなくて、ハイキングを楽しむ森や丘もあるだろう。
 いずれにしても、登り、歩くのは自分だ。
 
 おもしろいのは、高みに行けば行くほど山の景観も変わり、仲間の種類も変わるということ。
 頂上に近づくにつれて陽を遮ってくれていた樹木は姿を消し、代わりにごつごつした岩肌がむき出しになってくる。
 共に歩いていた仲間も少なくなり、表情は疲労と苦悶の影を落とす。

 人生も同じではないか。
 
「孤独」が姿を現わすのがこのときだ。
 待ってましたと言わんばかりに寄り添ってくる。
 振りほどこうとすればするほど、ぴったりと張り付いて離れない。
「孤独」がまとった負のイメージが、恐れや拒否反応となって襲いかかる。
 しかし、ほんとうに「孤独」は恐怖なのだろうか。
 
 ある中学生が「人間とクマの共生」について、新聞に投稿していた。
 酪農を営む彼の家に、ヒグマの親子が姿を見せた。
 近隣の目撃者によると、彼の自宅から700メートルほど先の牧草地で、何かを食べていたという。
 見た目はかわいいが、人間に被害を及ぼすかもしれないと考えると少し怖い。
 そこで彼は、クマの習性について本で学ぶことにした。
 クマが人を襲うのは、多くの場合、人の存在に驚いて自分の身を守ろうとするため。

 だから、クマと遭遇しても騒がず、刺激を与えない。

 森に餌が足りなくなって、農作物やゴミを目当てに人里におりるということ。
 
「ただ怖がるだけでなく、クマの習性や行動をきちんと学ぶことで、人間とクマが共生できるようになったらいいなと思う」と、締めくくっていた。
 
 恐怖と向き合うこと。
 それが恐怖を克服するためには一番いい方法だろう。
 
「孤独を学べ。孤独を知ることは、他人を知ることだ」
 
 他人を知れば、自分という人間も知ることができる。
 自分の長所や短所がわかれば、どう関わっていけばいいかがわかる。

 自分を生かし、周りも生かす方法が、きっと見つかるはずだ。

 

神谷真理子(本コラム執筆者)公式サイト「ma」

 

●「美しい日本のことば」連載中

 今回は「もてなす」を紹介。 日本の代名詞とも言われる「おもてなし」。相手を思いやり、慈しみの心でお迎えする。客人へのあたたかい心配りが「おもてなし」の基本ですが、一歩間違えると、心配りが過剰になったり、客人の言いなりになってしまうこともあります。続きは……。

●「日日是食日」連載中

(210716 第732回)

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