日本人として覚えておきたい ちからのある言葉【格言・名言】
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人間ができてはじめて絵ができる

横山大観

 下村観山や菱田春草らとともに岡倉天心に学び、近代日本画壇の礎を築いた横山大観。「画は人なり」というその言葉どおり大観は洋の東西を問わず人に学び、自然に学び、さまざまな芸術文化や学問に親しみ研鑽を積んだ。その結果生まれたのが「朦朧体」という線を排除した画風である。発表当初の酷評が嘘のように、今では巨匠の画風として賞賛を浴びているのも、大観の人間性の表れだろう。
 
 ある人が言うには、人はこの世に生れ落ちる時、自分だけの特別な宝を携えてくるらしい。
 それは似ているようで、それぞれまったく違うらしく、玉磨かざれば光なしのことわざどおり、磨いた宝は光り輝き、磨かなければただの石ころなのだとか。
 しかもすぐには宝には見えず、なんの変哲もない、ともすると小さかったり汚れていたりして、誰も見向きもしないような石かもしれないのだと。
 

 それを宝石に変えるのだから、それなりの時間も労力も必要になるだろう。
 昭憲皇后も、こう歌に詠んでいるように。

 

 ―― みがかずば玉も鏡も何かせむ まなびの道もかくこそありけれ
 
 大観は、絵の能力という宝の原石を磨きつづけたようだ。
 他の宝も持っていたにちがいないが、大観はその石を選んだ。
 選んだ石を自分の力で、あるいは他者の力を借りて磨いていった。
 磨き方を学び、工夫しながら、試行錯誤を繰り返し、ただの石を宝石に変えていったのである。
 おそらく石の変化とともに大観自身にも変化は起きていたはずで、その変化が随所に絵に表われていただろうことは想像がつく。
「人間ができてはじめて絵ができる」と語っているのだから。
 
 画は人なり、書も人なり。
 人間性は目に見える。
 所作も言葉も生き方すべてにあらわれるのだ。

 

●神谷真理子(本コラム執筆者)公式サイト「ma」

 

●「美しい日本のことば」連載中

 今回は「身に入む」。秋の季語にある「身に入む」、「入」を「し」と読ませて「身にしむ」です。続きは……。

https://www.umashi-bito.or.jp/column/

●「日日是食日」連載中

(201030 第677回)

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紺碧の将
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