日本人として覚えておきたい ちからのある言葉【格言・名言】
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ココロバエ
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人は変化しようとするとき、どんなに辛くとも自分自身に鋏を入れ、過去の自分を切り捨てなければならない。

安田登

 能楽師のワキ方を務める安田登氏の言葉をもうひとつ。高校時代に麻雀とポーカーにはまったことをきっかけに、甲骨文字や中国古代哲学に目覚めたという安田氏。文字への興味は尽きることなく、今はシュメール語の研究も進めているのだとか。現代の心の時代の次に来るのは「あわいの力」が発揮される時代だという。著書『あわいの力 「心の時代」の次を生きる』に詳しい。
 
 ひとつの時代が終わり、新しい時代が幕を開けようとしている。
 そのとき、われわれはどこで、なにをしているのだろう。
 これまでと同じ、というわけにはいかない。
 
 適者生存。
  
 強いものが生き延びたのではなく、変化に適応したものが生き延びる。
 
 しかし一方で危惧するのは、
 過剰適応。
 
 あまりにも適応しすぎて、本来持っている可能性を失ってしまうということ。
 戦後の日本が西洋の合理主義や産業社会に適応しすぎたあげく、日本人らしさや情緒を失ってしまったように。
 そしてまた、ある環境に適応しすぎた生物は、環境の変化に弱い。
 在来種の生き物たちも、外来種に占領されて生きる場所を失った。
 
 適応しても、しすぎてもいけないのなら、どうすればいいのか。
 変化・進化し続けることだ。
 
 安田氏いわく、
 能の稽古は常なる「初心」。
 すなわち変化・進化を目指すもので、終わりはない。
 
 頭部をしたたかに打って死ぬ思いをしたという安田氏。
 そのときのことを、こう振り返っている。

 

「『ああ、死ぬってこんな感じなのかなあ』と思いました。
…頭を打ったあと、空から落ちてくる雨を顔に受けながら『ああ。自分は倒れたんだ』とはじめて気づきます。
死も同じで、『死んだ』ということは、死んでからしかわからないのではないか」
 
 死ぬまで自分が「死んだ」ということに気づかない、
 死んでからも気づかないということは、
 人には「生きている」という状態しかないのだ、と安田氏は言葉を継ぐ。
 
 そこで世阿弥の
「初心、忘るべからず」。
 
 初心の「初」は「衣」と「刀」。
 布地にはじめに鋏を入れるという「初」。
 着物を作るにはどんなに美しい生地であっても鋏を入れねばならない。
 
 同じように、
「人は変化しようとするとき、どんなに辛くとも自分自身に鋏(刀)を入れ、過去の自分を切り捨てなければならない」
 
 人は生きているという状態しかないのなら、人生に終わりはなく、
 どこでなにをしていようとも、
「初心、忘るべからず」なのだ。

 

●「美しい日本のことば」連載中

今回は、「零れ桜」を紹介。

はらはらと舞い散る桜。零れ桜(こぼれざくら)です。日本人にとって、桜はもののあわれを誘う花。続きは……。

●「日日是食日」連載中

(200505 第637回)

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