精神を鍛えるにはどうすればいいか。それは、筋力を鍛えるのと同じで、精神にストレスを与えればいい
現代はストレス社会と言われている。老いも若きもストレスに押しつぶされ、病気になってしまったり、あげく、死に至る人もいる。
ストレスにもいろいろあるだろうが、その大半は、何らかの悩みを抱えているということではないだろうか。
では、「悩み」は悪いものなのか。
渡部昇一氏は、著書のタイトルにこう掲げる。『悩む人ほど、大きく伸びる』と。その中の一文である。
「ストレス社会」は、今にはじまったことではない。
むしろ、先人たちが生きた時代のほうが、よほどストレス社会といってもいいのではないか。
生きるか死ぬかの瀬戸際で生きていた人たちは、現代人以上のストレスがあったにちがいない。だが、ストレスをストレスと感じる暇もないほど、毎日が精一杯だったのだろう。
悩みやストレスが悪いわけではない。
古今東西、人は悩みを抱えて生きてきた。人間とは悩める生き物であり、それが人間の進化進歩につながってきたともいえるのだ。
渡部氏は、こうつづける。
「悩めば悩むほど、精神は強くなる。ストレスは、成長するためには必要なことだが、かけすぎると筋肉同様、精神もまいってしまう。だから、ストレスの良し悪しを見分ける必要がある。気構えがしっかりしている人は、目の前にストレスが現れたとき、これに敏感に反応して見分けることができる」
一生懸命なにかをつかもうとする人は、ストレスからでさえも教訓を得ようとする。どんな些細なことからもすくいあげ、教訓として受け止められる人は、それを糧として強く生きられるのだ。
(160114 第156回)